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カップリング創作好きに100のお題

 以下のリンクから、SSに飛びます。
 物凄く短いものから、一瞬アレ?と思うほど長いものまで。
 下へスクロールしても読めます。
 オンマウスでカプ説明でます。

1.Boy meets Girl 2.花束 3.いじわる 4.波打ち際
5.ありがとう 6.きのう見た夢 7.熱 8.一目惚れ
9.手紙 10.抱きしめたい 11.冬の星座 12.たぶん、僕は
   忘れてしまうだろう
13.未来予想図 14.友人以上恋人未満 15.オルゴール 16.願いごと
17.月のない夜 18.見返してやるんだわ 19.ただ1つだけの真実 20.おそろい
21.告白 22.お薬 23.最後の言い訳 24.雨のち晴れ
25.ためらわない、迷わない 26.花盗人 27.冷たい頬 28.キャンディ
29.ひまわりの笑顔 30.ティータイム 31.おやすみ 32.イミテーション
33.ファースト 34.カゴの鳥 35.名前を呼ぶ声 36.夏が終わる日
37.わかっていると君は言う 38.灰色の時間 39.童話の王子とお姫様 40.間接キス
41.ナーサリーライム 42.やさしい嘘 43.長い旅 44.祭のあと
45.ただ、呟いただけ 46.小さな賭け事 47.恋敵 48.星空デート
49.薔薇の香水 50.Draw 51.悩みの種 52.なんでもない日常
53.歌を聞かせて 54.ひとりぼっち 55.アニバーサリー 56.モーニングコーヒー
57.あどけない面影 58.言えない一言 59.雨だれ 60.プレゼントは君
61.あたりまえの奇跡 62.デイドリーム 63.彼のネクタイ
   彼女のルージュ
64.stay with me
65.嵐 66.やきもち 67.あの頃の僕ら 68.彼女の恋人
69.プラチナリング 70.ふいうち 71.報われない努力 72.翳りゆく部屋
73.君には秘密 74.迷い込んだ風 75.Marry me? 76.探しもの
77.ひゃくまんつぶの涙 78.サイン 79.それじゃ、バイバイ 80.クラシック
81.ほどけた髪 82.月明かり 83.鼓動が限界 84.傷痕
85.The day after 86.ドレスアップ 87.儚い季節 88.他愛のない喧嘩
89.触れた指先 90.目を閉じておいでよ 91.壊れた約束 92.ジューンブライド
93.ホームワークが
   終わらない
94.気まぐれな熱情 95.癖 96.not awaken
97.このまま夜明けまで 98.ミステイク 99.ただ、君を待つ 100.タイムリミット






















001.Boy Meets Girl

 ただの散歩は、その風で一変した。
 風が吹いて。周囲の雑音が、一気に掻き消えた。
 そして春風に乗って届いた音は、あまりにも衝撃的だった。
 誰だろう。プロの音じゃない。それにしてはたどたどしすぎる。
 そう分かっているのに、音のする方に向かわずにはいられなかった。
「マリア・・・」
 シューベルトのアヴェ・マリア。
 確かにそれを弾いているけれど。
 アヴェ・マリアを、穏やかな笑顔で奏で続ける女の子が――酷く聖母マリアに似ている気がしたんだ。

 それが、僕が初めて香穂さんを見た日で。
 僕が君を追いかけようと思った、きっかけなんだ。

【金色のコルダ2:加地×香穂子】
 発売前はこんなキャラだなんて思ってなかった(笑)

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002.花束

 花束なんて持ってていいのは、どこかの少女マンガのヒーローだけだと思ってたんだがな・・・。
「どうかされたんですか、金澤さん」
「いや別に」
 百合の花束をぞんざいに膝の上に乗せながら、主役のヴァイオリニストが再びステージに上るのを待っている吉羅に力なく笑いかける。
「人間、変わるもんだと思っただけだ」
「そう思うなら、あなたも今すぐタバコに別れを告げて、さっさと治療しにアメリカでもヨーロッパへでも行ってください」
「そんな言い方はないだろ」
 あまりにも言い方が気に入らなかったから。
 花束持ってる姿にあいつも惚れ直すかもな、なんて言葉は言わないで置いた。
 いちいち、イライラさせられる後輩だ。

【金色のコルダ2アンコール:吉羅×香穂子+金澤】
 香穂子のリサイタルは毎回花束持参で。

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003.いじわる

「・・・先輩は、ホンットに意地が悪いですね!性格悪すぎです!」
「今更じゃないか?」
「・・・っ、でも・・・!」
 カッと頬を紅くして、俺を睨みつけていた視線を勢いよく外す。
「・・・何も、土浦くんの前であんなことしなくても」
「ギャラリーがいるキスもいいんじゃないか?」
「いいわけないです!」
 ちょっとした牽制だろ?

【金色のコルダ:柚木×香穂子】
 私的萌えをやってみた。

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004.波打ち際

 何度目かのデート。冬の海。
 外の世界はこうも広くて、鮮やかで、煌いていたのだと、この年になってようやく分かった。
 教えてくれた人が、見せてくれた人がいたから。
「あーぁ、今日は曇ってるねー」
 世界の広さを教えてくれた人は、残念そうにそう言って波打ち際にちょこんと屈んだ。
「きらには曇って見える?」
「吉乃さんには晴れて見えるの?」
 不審そうに、怪訝な顔でオレの顔を見上げてくるきら。そんな些細な表情の変化さえも見逃さずにいられる位置にいられることが嬉しくてたまらない。
「オレには、晴れてるって言うより輝いてるように見える」

 曇った空から微かに覗く太陽の光が。
 反射する海が。
 なによりも、

「きらといられるこの時間が、全てを輝かせてくれるのかもしれない」
 ・・・・・・・・・・・・・・さすがに、言ってて恥ずかしいことこの上なかった。

【水の旋律〜緋の記憶〜:吉乃×きら】
 甘いのか馬鹿なのか分からなくなった。

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005.ありがとう

 俺の妹に生まれてきてくれてありがとう。
 お前が生まれてから、俺は毎日が楽しかった。
 お前の一言一言が嬉しくて、楽しみで、わくわくした。
 だから、お前のためなら兄ちゃん、なんだってしてやりたいんだぞ?
 ありがとう、本当に俺の妹でありがとう。

 いつもそう思ってたのに、いつから妹でありがとうなんて思えなくなったんだろう・・・?

【乙女的恋革命ラブレボ!!:鷹士×ヒトミ】
 ガチな兄妹には萌えより前に仰け反った。

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006.きのう見た夢

「きのう見た夢・・・ですか?」
「うん、私、志水くんはもちろんなんだけど、理事長とまで一緒にアンサンブルやってる夢を見ちゃってね」
 おかしそうに笑いながら話す香穂先輩に、ふと笑顔が零れる。
「僕も先輩の夢を見ましたよ」
「え?そうなの?」
 キョトンと、不思議そうに見返された。
「僕の場合は、先輩と二人っきりで草原に寝転んでる夢でしたけど」
 僕だけが先輩のことを好きなんじゃないかと少し不安にもなるけれど。
「私も、そんな夢の方が見たかったなあ」
 そう、本気で言ってくれる先輩だから、いつ不安が訪れてもすぐに愛しさに変わっていくんです。

【金色のコルダ2:志水×香穂子】
 ほのぼのカプで可愛いと思います。

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007.熱

「馬鹿は風邪引かないって聞くんだがな」
「先生、それはどういう意味ですか」
 体育の授業中に日野が倒れたと聞いて来てみれば、保健室のベッドで横になっている彼女がいた。
「おっと、怒るなよ。熱上がるぞー」
 ニヤニヤ笑ってからかえば、ムスッとしたように頬を膨らませている。ハムスターかお前は。
 セレクションが終わったばかりで、ようやく気が緩んだんだろう。
「・・・風邪、拗らせんなよ」
「分かってます。先生にも心配掛けちゃったみたいだし、早く治しますね!」
 不機嫌さを収めて、笑顔が向けられる。
 この無邪気さは若者の特権か?
「そうだな。お前さんがいないと、準備室にいても面白くない」
「・・・・・・それは、いつも私にそこにいて欲しいって意味ですか?」
「さあて、俺は仕事に戻りますか」
 用事は済んだとばかりにベッドから一歩離れる。
「え、誤魔化さないで、」


「意味はお前の好きなように取ればいいよ」


 そう言い残し保健室を出て後悔する。
 俺自身も熱あるんじゃないのか・・・。
 仮にも教え子にあんなことを言ってどうするんだ。

【金色のコルダ:金澤×香穂子】
 教師としてこの台詞はダメだろうとは思ったんだ…。

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008.一目惚れ

「一目惚れ?」
「はい、一目惚れ」
「そんな言葉もあったね。あまりにも無縁すぎて忘れてた」
 えー・・・と非難するような視線を向けられる。
 本当に無縁のものだからそう言っているのに、どうしてそんな視線を向けられなきゃいけないんだ。
「言っておくけどね、香穂子」
 ニヤッと笑って見せれば、一瞬にして身構えたのが分かった。
「俺が一目惚れを信じるような奴だったら、お前は今隣にいないよ?」
「え」
 思いっきり固まってしまった香穂子に、思わず吹き出した。
「!・・・か、からかいました!?嘘ですか!?」
「嘘ではないけどね」
 一目惚れもこの世にはあるんだろう。俺に寄せられる好意のほとんどは一目惚れとか言うものだ。
 それはそれでいい。
 ただ俺は、外見だけで一生を左右するような恋愛はしないだけの話だ。

 これ以上、お前を驚かしても悪いから、今は言わないけどな。
 ただ、覚悟だけはしておけよ?

【金色のコルダ:柚木×香穂子】
 甘くないようにと言い聞かせつつ。

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009.手紙

「聞いて聞いて、ホント凄いんだけど」
 朝から炎樹のうるさい喚き声がスタジオに響き渡った。スタッフのほとんどが辟易している。
 ここが海外でなかったら、今すぐこれを大人しくさせてくれる人を呼べるのに・・・!
「・・・どうかしたんですか?」
 炎樹との共演は初めてという新人タレントが、うっかり炎樹の話に乗ってしまった。
「聞きたいか!?」
「は、あ・・・ええ・・・?」
「明里からな!手紙が届いたんだよ!!ほらこれ、子供の写真入りで。明里可愛いだろー。羨ましいか?」
 普通は子供の自慢だろうに、奥さんの自慢しかしていない。
「あー・・・そうですね、綺麗な方ですね」
 そう言った瞬間に、空気が凍った。言ってはいけない一言だった。というか、この浮かれた状態の炎樹には、何も言ってはいけない。
「は、何お前、明里に気があんの?」
「はい?」

 奥さん、頼みますから珍しく手紙なんて送ってこないで下さい。
 テンションの上下が激しい人間がいると仕事になりませんから・・・!

【ラスト・エスコート:炎樹×明里】
 このくらいアホっぽくて間違いないと思う。

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010.抱き締めたい

 仕事もなく、朝からのんびりとむぎと散歩したり、テレビを見たり、お茶を飲んだり。
 今までが忙しすぎてあまりできなかったことが、今日はしていられる。
 それだけのことなのに、どうしようもなく幸せなことに思える。
「皇くん・・・?」
「え、なんだ?」
 さきほどまで笑っていたはずのむぎは、少し心配そうにしながら身を乗り出してきていた。
「なんだ?って言うか、皇くんが妙にじっと見てくるから、どうかしたのかなって思って」
「いや、別にそう言うわけじゃなくて」
「ならいいけど・・・最近疲れてるみたいだから、変に心配しすぎちゃったね」
 鬱陶しかった?と聞きづらそうに言われる。
 その姿が、いつもの明るさや、底抜けに元気な姿から少しだけ遠くて笑ってしまう。

「今さ、少し抱き締めたいって思った」

 今日のんびりとしすぎて気が緩んだせいだろうか。
 それとも、相手が仕事の相手なんかじゃなく、むぎだからだろうか。
 たぶん、むぎだから、なんだろう。
 むぎは本当に俺を素直にさせてくれる。
「ありがとう」
「・・・・・・抱き締めたいって言ってすぐにありがとうは、意味がわかんないよ・・・?」
 困ったように首を傾げられて、また愛しいと思ってしまった。

【フルハウスキス2:皇×むぎ】
 のんびり過ごす2人の時間を大切にねって思ったのではないかと…

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011.冬の星座

 星空を見上げるたびに思う。
 本当に違う世界なんだと。
 ずっと身をおいてきた世界の夜空は広くて、特に冬なら、空気が澄んでいて星の瞬きさえも分かったほどだ。
 でもここは、空は狭くて、冬だという今でさえ星は辛うじて見えるかどうかだ。
 人と人とが関わらなくなって来てしまっているこの世界。
 星の光が見えなくなっているように、人を繋ぐ糸も見えなくなっている。
 ――そう思うのは、自分には人と繋がる糸があるのが、分かっているからだろうか。
「九郎さーん?お茶入りましたよー?・・・あれ、庭にいると思ったんだけど・・・いない?」
 家の中から、望美が呼びかけているのが聞こえた。

 時空さえも越えた末の恋。
 望美と、戦のない平和な世界を見ていきたいと願った結果が、この世界だ。
 どんなに空が狭くても、どんなに世界が寒々しく思えたとしても。
 隣には変わらず望美がいてくれる。それだけで、心に灯が燈るようだ。
 俺たちは、お互いを信じていけばいい。
「今戻る。・・・なあ、今日はいつもより、星が見えやすいんだ。あとで一緒に見てみないか?」

【遙かなる時空の中で3:九郎×望美】
 ED後は結構仲良くやりそうです。

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012.たぶん、僕は忘れてしまうだろう

 君を想っている間、僕はいつも前向きでいられた。
 君の影響かな。
 前向きでさ、何があっても明るいの。鬱陶しいくらいね。こんなこと言ったら怒られそうだけど。
 でも、君に好きな人ができてからはちょっと変わったかな。
 この想いは、きっと君の邪魔になるから。だから黙ってる。

 いつかは僕もこの想いも忘れられる。


 本当にそう思ってたんだ。
「ねえ、僕と付き合わない?」
 あいつといることで君が傷つくのなら、僕が傍にいて癒すから。

【フルハウスキス2:?×むぎ←瀬伊】
 フルキスの醍醐味はやっぱりセカンドかな、と。

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013.未来予想図

 どんな未来があたしたちを待ってるだろう―――?

 未来が見えなくなったときもあった。
 苦しむ姿を見ていられなくて、逃げ出しそうになったときもあった。
 逢いたくても逢えない現実に、涙を堪えたときもあった。
そんな日々の連続だったのに。

「見せつけてあげばいいよ」

 あなたの笑顔が今ある。
 傍にいてくれる。
 見えなかった未来に光が差して、少しだけ今までと違う幸せが見えた気がした。

【乙女的恋革命ラブレボ!!:神城×ヒトミ】
 ベストEDには泣いた。

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014.友人以上恋人未満

 恋人ではないよね。
 じゃあ、友達?それとも、ただ席が隣のクラスメイト?
 ふと日野さんを思い出して、僕と彼女の関係を考えてみた。
 最初は音に憧れただけの彼女だったけれど、それでもずっと一緒にいるうちに憧れは恋に変わった。
 僕にはそれが自然なことだったんだよ。
 音楽の才能だけじゃない。それだけで恋はできない。
 彼女の人間的な部分が、本当に好きだと思えたから。
 明るくて、無邪気で、優しくて。
 でも、彼女は? 確かに僕と一緒にいて退屈しているようには見えない。
 だからって、僕のことを好きだと思ってくれるだろうか。恋愛対象として見てくれている?
「・・・・・・・・・凹む」
 見てくれてないよな、と結論付けて落ち込んだ。
 こんなに落ち込んだのは、自分に才能がないと認めたとき以来だ・・・。

【金色のコルダ2:加地→香穂子】
 加地→香穂子の構図が大好物です。

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015.オルゴール

「この曲、エリーゼのためにだよね」
 ふらと寄った店で香穂が見つけたのは、アンティークのオルゴールだった。
 曲は、あまりにも有名なエリーゼのために。
「そうだな。いつだったかは、この曲聞いたことあるとしか言ってなかったな」
「う、ど忘れしてただけだよ」
 俺たちにとっての想い出の曲。
 気付かなかったとは言え、これが俺たちの出会いで、ある意味始まりでもあった。
「でも、そうだなあ・・・」
「どうかしたか?」
「うん? 私たちの出会いって、結構ドラマチックだったんだなあって」
 どこかうっとりと言う。女にとってはそんなに運命的なものだったんだろうか。
「俺はそうは思わないけどな」
「えぇ?」
 少し非難めいた反応に苦笑する。

 俺は出会いを運命的だなんて思わない。
 運命、なんて言葉で出会っていたら、その後の俺たちの積み重ねた時間まで、運命だったように思えるだろ。
 運命でもなんでもなく、あれは俺たちだけで積み上げた、

――俺たちだけの時間だったよ。

【金色のコルダ2:土浦×香穂子】
 運命って括られるよりもこっちの方が好きだったりする。

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016.願いごと

 叶わないかもしれない。
 それでも願わずにはいられないんだ。

 お願いだから、僕の傍にいて欲しい――・・・

 彼女を苦しめる選択なのは分かっていても、願わずにはいられない。
 僕にとっての希望の選択肢であるように、彼女にとっても少しでも優しさがある選択肢だったらいいのに。

【乙女的恋革命ラブレボ!!:神城×ヒトミ】
 完治するまでヒトミとの関係にグルグルすればいいよ。

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017.月のない夜

 夜空を見上げる。
 雲ひとつなく、そして満月が空に浮かんでいた。周りの星たちが、キラキラと煌いている。
 その美しいとしか言えない光景に、ほうと息を吐き出した。
 夜空に浮かぶ月が、いっそ眩しいほどだ。
 泣きそうになるくらい、懐かしく、そして慕わしい。
 夜空に浮かぶ月だけが皆にとっての「月」なのに。
 俺にとっては、その月は贋物でしかなくて、ただ切なく、苦しいだけの存在だった。
 俺はどこで間違えたんだろう。
 君が近くにいない夜が、こんなに苦しいだなんて思わなかった。

 「明日」が来ないのなら、俺は君を手放さずに済んでいたのにね―――。

 満月が薄らいで、次第に明るくなる空を見上げながら、君に好きだと言ってもらえた夜を思い出していた。
 俺も君を愛してる――・・・ 

【遙かなる時空の中で3十六夜記:景時×望美】
 このルートが好きすぎて、ちょっとやばいことになってる。

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018.見返してやるんだわ

「もう、本当に失礼しちゃうよね!」
「ああ、そうだな。御堂の野郎も、たとえ本当のことでももう少しオブラートに包むべきだろ」
「本当のことって酷いと思うんですけど」
「え、あ、そういう意味じゃなくて!」
 いきなり麻生の家に遊びに来たむぎは、麻生相手に愚痴を零していた。
 先日、抱き締められたときに「お前、太っただろ?」とストレートに言われたのだとか。
 それが未だに頭に来ているらしい。
「・・・もうムカついたから、」
「別れるとか言い出すんじゃねえだろうな!?」
 試しに言ってみれば、勢いが削がれたように呆れられる。
「いや・・・別れはしないけど・・・」
「あ・・そうなんだ・・・?わ、わりぃ」
「別れないけど、すっごいムカついたから、一哉くんがびっくりするくらい綺麗になる!」
 まずダイエットから始めないと!
 そう言って、ここに来る途中に買ってきたらしい雑誌をいそいそと読み始めた。
 別れ話を。一瞬だけ期待した自分には蓋をしておこう。
 こいつが幸せなら、それでいいだろ。

【フルハウスキス2:一哉×むぎ←麻生】
 無理に幸せを壊せない麻生のいい人っぷりに涙が。

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019.ただ1つだけの真実

 あなたにはいくつもの嘘を重ねたね。
 あなたのお母さん、彩子さんの守護者だったことも隠していた。
 真緒のことでも、いくつも隠し事をしてきた。
 あなたを守るためとは言え、君にはいくつの隠し事をして、嘘を重ねただろう。
 それでもあなたは私を信じてくれた。
 いくつもの嘘に紛れた真実だけを信じてくれたね。
『あなたを愛している』
 それだけは譲れない、ただ一つの私の真実だ。

【翡翠の雫:亮司×珠洲】
 昼ドラでもいいじゃないか!

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020.おそろい

「火原・・・それは?」
 珍しく会った友人の胸元には、シルバーリングがチェーンに通されて掛かっていた。
 今までこんなものをしているのは見たことがない。普段見ていたのは制服だから、ある意味当然だが。
「え、これ? 何だと思う?」
 楽しそうに聞いてくる火原に、柚木は少し考える。
 指輪。それは分かる。それだけならここまで嬉しそうにするだろうか?
「日野さん絡み、かな」
「あったりー!よく分かったね!」
 よく分かったね、と言われても日野絡みとしか言ってない。何も当ててないだろう。
「これ、この前のデートのときにペアで買ったの。香穂ちゃんのは、これより少し細いタイプでね・・・」
 延々続く惚気話に苦笑しつつ思う。
 これだけ真っ直ぐに愛されたら、あいつも幸せだろうな。
 素直に香穂子を好きだと言える火原を、ほんの少しだけ羨ましいと思ったのはきっと気のせいだ。

【金色のコルダ:火原×香穂子←柚木】
 明るい火日も好きなんですよ。

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021.告白

『好きです』
 言った瞬間の、珍しくぽかんとした表情が忘れられない。
 何を言っているんだと、そう思っているのがありありと分かった。

「あの時は、いきなり何を言っているのかと思ったよ」
「・・・・・・私は、あの時一生分くらい後悔しましたね」
 思い出すだけでも恥ずかしい。
 高校2年の半ばで出会って、ちゃんとしたその告白をするまで、何年あったんだろう。
 傍から見ればデートのように、ほぼ毎週会っていた。
 私のリサイタルともなれば、どんな用事よりも優先してくれた。絶対に認めなかったけど。
 そんな理事長だ。大丈夫、絶対大丈夫。
 震えそうになるのを必死に堪えて、思い切ってみたのに、反応は呆気にとられるような表情。
 後悔するなと言う方が酷だ。自分から告白なんてしたことなかったのに!
「だが、私はもう恋人のつもりだったからね」
「いつそんな風に思ってくれたのか、私には分からないですから!」
 聞く人が聞いたら、どれだけナルシストかと思われますよ。
「君には付き合ってるのかと聞かれていたし、それ以前に、君の態度は分かり易すぎる」
「・・・そうですか・・・・・・」
「それに私は3つ、恋人になる方法を示したはずだよ。そのうちの一つは、ヴァイオリニストだ。君がヴァイオリニストとして認められたときから、」
 そこで一旦区切ると、楽しそうに笑った。
「君は私の恋人のはずなんだがね」

 なかなか付き合っていると気付かない恋人は、酷く面白いものだったよ。

 痛烈な嫌味に、俯くしかなかった。

【金色のコルダ2アンコール:吉羅×香穂子】
 実際にこんな感じだったら萌えるのは私だけですか。

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022.お薬

「ダメだったら。ちゃんと飲んで、ね?」
 ようやく冬休みに入ったと思っていたら、要さんがいきなりインフルエンザなんて貰ってきてしまった。
 それがまだか弱い子供にうつらないわけがない。
 必死に宥めすかして、要さんの横に眠る樹に言う。
「ほら、パパもお薬飲んでるでしょ?」
「そうそう。樹ー、ちゃんと飲めよ」
 精一杯父親らしくしようと、そんなことを言っている。
 普段会えない分、こういうところで父親らしいことがしたいのかもしれない。
「・・・でも、パパも飲んでなかったよ?」
「ば・・・ッ、何バラし・・・何言ってるんだ!」
「何やってるんですか、要さん!?」
「待て待て待て、飲んだ、飲んだよ!飲んだだろ、俺!?」
「誰に確認してるんですか、父親らしくしたいなら薬が苦かろうとなんだろうと、ちゃんと飲んでくださいよ!」

 全然父親らしいところなんかなく、数日間でインフルエンザは二人とも治ったのだった。

【ラスト・エスコート:炎樹×明里】
 子供っぽい炎樹でいいんだ。

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023.最後の言い訳

 聞いてもらえるなんて思えない。
 彼女のいないキッチンを見ながら、心の中で言い訳をしてしまう。

 君を傷つけたいなんて思ったわけじゃない。
 君の心の準備ができるまで、待とうと思っていた。
 君があまりに皇を気にかけることが不安になった。
 今更、言い訳にしかならなくても、どうしても伝えたい。

 君は俺の最後の恋だと思うよ―――・・・

 僕たちの別れは、本当にすぐ傍に来てしまっているのか・・・?

【フルハウスキス2:依織×むぎ】
 え、皇ルート一直線ですが何か?

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024.雨のち晴れ

「・・・まだ拓哉たちは仲直りしてないのか」
 昨晩から降り続く雨に辟易しながら呟いた。
 この辺り一帯のみが雨ということは、白石が泣いていると言うことだろう。
 拓哉もさっさと謝って和解してしまえばいいのに。
 誕生日を忘れていたことくらい、すぐに謝っておけば済むことだろう。
 拓哉が拓哉自身の誕生日を忘れて予定を入れてしまっただけの話なのだし。
 謝りに行かせてから、もう2時間は経っただろうか。
 晴れれば、二人が和解したということが一部の人間には駄々漏れだ。
「白石も、拓哉などに関わらなければそんな力を持たずに済んだのにな」
 たとえそんな未来が選べるとしても白石が選ぶなんて言わないのだろう。
 白石をどうしても、かつての妻に重ねてしまうが、どうあっても違うのだろう。
 心が読まれてしまうとしても、拓哉の傍で生きたいと彼女は選んだ。
 梓にはなかった強さを彼女は持っている。

「・・・・・・・ようやく、晴れてきたか・・・」

 過去の過ちに囚われて動けずにいた拓哉を解放してくれてありがとう。
 これから先の未来、二人は自分には見えなかった未来を見せてくれるのだろうか。

【水の旋律:拓哉×陽菜+貴人】
 貴人も二人に希望を見出せればいいと思った。

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025.ためらわない、迷わない

 手を伸ばしてもいいの?
 あたしが先輩の手を取ったら、先輩の苦労が全部台無しになっちゃう。
 そう教えてくれたのは、九艘の当主さんだった。
 京にいのお父さんのせいで、安曇先輩たちはずっと辛い思いばかりしてきたと。
 それなのに、あたしなんかを選んじゃったら、全部が水の泡なのに。

 分かっていても。
「あたしは先輩が好きだから」
 俺が九艘だからという理由で諦めるなって言ってくれた先輩に、ありがとうって言いたいよ。
 迷わないから。
 少しでも、一謡と九艘が分かり合えればいい。
 そう願うあたしたちが、これから優しい未来を見つけていけたらいいよね。

【水の旋律2〜緋の記憶〜:康秀×きら】
 幸せになってくれと心から願ったカプでした。

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026.花盗人

「どうしたの、暗い顔して」
「あ・・・神城先輩・・・」
 ぼうっとマンションの屋上で空を眺めていると、不意に神城先輩が顔を覗かせた。
 相変わらずの穏やかな笑顔だ。
「君がそんなに落ち込んでるのは珍しいね。何かあったのかな」
「・・・・・・・何があったわけじゃないですけど・・・ちょっと・・・」
 もうすぐ先輩は卒業してしまう。もちろん、一之瀬さんもだ。それが寂しい。
 どんなに好きでも、きっと一之瀬さんは私のことなんて全然気にしないで出て行ってしまう。
 そのことが寂しくて、嫌で、辛い。
「蓮も罪作りだよね」
「そうで・・・ええっ!?」
「ヒトミちゃんみたいな可愛くて優しい子に、出て行ってほしくないって思ってもらえる蓮が羨ましいよ」
「そんなこと・・・ッ」
「いいよ、誤魔化さなくて。花の笑顔が早く戻ってくると嬉しいな」
 否定の言葉を笑顔で遮った先輩が笑顔で言って、空を振り仰いだ。

「僕が出て行った後も、君だけは僕のこと覚えていてくれると嬉しいな」

【乙女的恋革命ラブレボ!!:一之瀬×ヒトミ+神城】
 絶対にヒトミも一之瀬も忘れないよ…!と思う。

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027.冷たい頬

 駆け寄る足音が聞こえた。
 望美・・・ちゃん、かな。
「景時さん!?」
 ああやっぱり。そして、『本物』の望美ちゃんだね・・・。
 覗きこんできた君の顔は、とても青白くて、どうしてだろうと思った。
 君は駆けていたはずなのに、触ったらとても冷たい気がする。

 血の気が引くほど心配してくれたのかと思うと、なぜかほっとするような、嬉しいような。
 ・・・・・・安心するんだ。

「ああ・・・・・・そうだね、君、だね・・・・」

【遙かなる時空の中で3運命の迷宮:景時×望美】
 好きなんだこのイベント…!

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028.キャンディ

「食べる?」
 差し出されたものに驚いて、思わず振り仰いだ。
「いらないならいいけど?」
「あ、ありがとうござい、ます」
「どうぞ。・・・・で、お前は何をまた落ち込んでるの」
 やっぱり見抜かれてる。そりゃ、ベンチで俯いてれば何かしらあるって思われるだろうけど。
「・・・・たまには気づかない振りしてくれてもいいじゃないですか・・・」
「大学帰りに、せっかく寄ってやったら心配してくれと言わんばかりの態度だからね」
「心配してくれたんですか?」
「・・・・・言葉のアヤだよ」
 絶対に素直に心配したと言ってくれない先輩に、ふと笑いが込み上げてきてしまった。
 それに気づいた先輩に、怪訝な顔はされたけど、

「・・・・・・・・もう少し、頑張ってみようかなって思います」

 勝手にすれば? 言葉は冷たいのに、『頑張れ』と言われた気がして。
 受け取ったキャンディを、口に放り込んだ。
 うん、まだ頑張れる。

【金色のコルダ:柚木×香穂子】
 嫌がらせされた香穂子を励ます柚木…玉砕orz

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029.ひまわりの笑顔
「ひまわりって可愛いよね!」
 私のフラワーアレンジメントを見た先輩が、そう言ってくれた。
「は・・・はい、私も大好きで・・・・、先輩も好きだったらいいなあって思ってたんです」
「うん、大好き。でも、笙子ちゃんの作品見たら、なおさら好きになったかも」
 大好きな笑顔で褒めてくれて、とびきり眩しい笑顔が向けられた。
 この笑顔が私の宝物かもしれないとさえ本気で思ってしまう。
「私、ひまわりも、笙子ちゃんの作品も、もちろん笙子ちゃん自身も好きだなあ・・・」
 しみじみ言ってくれた先輩に、思わずつられて笑顔になる。
 こんなに自然に笑えるようになったのは、本当に先輩のお陰です。

「私も先輩と先輩の音楽が大好きです」

 先輩とずっと笑いあえる夏が続けばいい―――。

【香穂子+冬海】
 百合を狙ったわけじゃない。

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030.ティータイム

「アンジェ、お茶にしよう」
 珍しくお茶を淹れて、アンジェを呼ぶ。
 今日はたまたまニクスたちも留守で、オレたち二人だけだ。
 気を遣ってくれたわけでは断じてないだろうが、偶然に感謝してもいい気がする。
「レイン?言ってくれたら私が淹れたのに」
 驚いたようにしてから、申し訳なさそうにテーブルに着いた。
「たまにはオレだって淹れるさ」
 ニクスほど丁寧には淹れられないが、飲めなくはないはずだ。
 ふと視線をアンジェに向けると、ニコニコとずっとこちらを見ていた。
 そのまま外すわけにも行かなくて、
「・・・そんなに見るなって」
「嫌だった?」
「・・・嫌って言うか、ずっと見られてたら気になるだろ」
「レインが私のために淹れてくれるなんて初めてだから、つい嬉しくって」
 確かに初めてではあるが。
 少し複雑な気分になって、今度こそ視線を外した。
「困ってるのも珍しくて、見ていたいって思うの」
 楽しげに笑うアンジェを少し睨みながら思う。

―――こんな風に話していられるのも、もう少しなんだろう・・・

【ネオ・アンジェリーク:?×アンジェリーク←レイン】
 アンジェが去る数日前…はこんな感じかなあ、とか思ってみた。

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031.おやすみ

 静かな部屋に、突然携帯のバイブ音が響いた。
 サブディスプレイには鈴原むぎの文字。
「・・・むぎ、さん?」
 微かに浮かんだ笑みを殺して、携帯を開いた。
 出るか、出ないか。
 正直、出たいと思う。ずっと文字だけを追っていたむぎさんの存在だ。
 声を聴いて、君がそこにいると実感したい。
 ・・・でも、少しでも関わりを持ってしまったら、今度こそ本当に手放せなくなりそうだから。
 一度手にした携帯をそのままにして、部屋を出た。
 これで電源から切ってしまえば、彼女だってもうかけては来ないと分かってはいるのに。
 自嘲が浮かぶのを止められなかった。
 彼女を好きになってしまったら、こうなると2年前の自分も分かってはいたはずなのに。
 廊下の窓から、雲ひとつない星空を見た。
 彼女と別れた2年前も、こんな夜だった。

「・・・・・・おやすみなさい」

 電話には出れなくても、彼女に酷い男と罵られようとも、君の幸せだけは願いたい。

【フルハウスキス2恋愛迷宮:東條×むぎ】
 配信前に書いた物。あながち間違いでもなかったですね。

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032.イミテーション

 俺たち兄弟は、きっと凄く細い糸の上にあったと思うんだ。
 愁一さんが、小さくそう呟いた。
 細い糸―――危うい?
「長男なのに一謡の力が顕現しなかった兄さん、次男なのに兄の代わりに加々良の家を継ぐことになった俺」
 少しだけ、本当に少しだけ笑って、
「俺たちはずーっと・・・お互いに遠慮しあってしか生きられないって、どこかで思ってた」
 何も言えなくて、ただじっと見つめるだけだ。
 こんな時になんて言えばいいのかさえ分からない。
「俺たち兄弟って、歪んでた?」
「そんなことないです!歪んでなんかないです・・っ」
 ただ否定するしかなかった。大丈夫だよ、優しすぎただけ、お互いがお互いに。
「・・・ありがとう、陽菜。今は、歪んでるなんて思ってない。兄さんも戻って来た。俺たちはこれからだって思ってる」
 心から滲み出るような笑顔だった。
 それが辛くて、何も考えずに言ってしまっていた。
「これからだって、今までだってずっとちゃんと兄弟でした・・・!歪んでなんかいなかった!!」
 本当に―――ただ、相手を思いやりすぎて、何も言えなかった、それだけだった・・・。
 歪んでなんかいない、ちゃんとした兄弟だった・・・。
「今までが偽物だったみたいに、言わないで・・・」
 涙を堪えることで精一杯だ・・・。

【水の旋律:愁一×陽菜】
 水季も愁一も何も間違ってなかったよ…?

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033.ファースト

「美味かったか?」
「うん!」
 ビリヤードの時の約束。
 時計の代わりの食事。本当に時計をやってもよかったのに、こんなに安上がりで済むとは思わなかった。
「あたしじゃ、あんな美味しいのは作れないからね」
「当たり前だろ、相手はプロだ」
「分かってますー」
 死に別れるでもなし、いつかは会えると分かっていたが、ここまで普通に笑えるとは思ってなかった。
「もう、夜も遅い。送ってやるよ」
「あ、ごめん。大丈夫」
「は?」
 タクシーでも使う気か。前はできるだけ使わないようにしていたと思っていたが、さすがに使う気になったのか。
「むぎ、御堂」
「皇くん!」
 嬉しそうに、声のする方に走っていく。
「皇、さん?」
「悪い。むぎと遊んでやってくれてありがとう。丁度仕事も終わったところだから、迎えに来たんだ」
「車?免許取ったのか」
 驚いたように言うと、むぎのために取ってみたと少し照れたように笑われた。


 去って行く車を見送りながらため息が漏れた。
「『遊んでやってくれてありがとう』って・・・」
 俺に取られるなんて欠片も思ってないってことかよ。
 それからむぎの笑顔を思い出して、凹んだ。
 そりゃ、あんな笑顔で駆けて来られたら、不安になんてなるわけない。
「・・・くそっ」
 こんな想い、早く吹っ切りたいのに。

【フルハウスキス2恋愛迷宮:皇×むぎ←一哉】
 ビリヤードでのアホな会話が大好きです。

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034.カゴの鳥

「かごの鳥、ねえ・・・」
 今までの俺がそうだった。
 男が鳥でも可愛くもなんともないが、実際「家」に囚われて、ずっと籠の鳥だった。
 諦めた物は数知れず。
 気づかないうちに失くしていった物だって多かった。

「明日、香穂さんは何か予定はある?」
「明日?明日は―――」

 似ていたはずの加地。同属嫌悪だとは分かっていた。
 誰よりも本質が自分に近かったはずの加地は、それでも自分とは何もかもが違っていた。
 置かれている環境が、取り囲む人間たちが、持っているものが。
 俺といても香穂子は音楽の道を閉ざされる―――、

 だから、加地と歩んでいくあいつが見られればそれでいい。
 ―――いいんだ。

【金色のコルダ2:加地×香穂子←柚木】
 根本的に一番似てるのは柚木と加地かなあ…?

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035.名前を呼ぶ声

「――ずくん?志水くん、どこー?」
 森の広場の茂みの中で、ケイイチたちと昼寝をしていたら、先輩の声が聴こえてきた。
 ミャー。ケイイチも分かるのか、伸びながらひとつ嬉しそうに鳴いている。
「せんぱ―――」
 ここです。
 声を上げようとして、やっぱりやめた。
 きっと先輩だったら気づいてくれるから。――気づいてほしい。
 ミャ?不思議そうに見上げてくるケイイチの頭を一撫でする。
「静かにね。―――見つけてくれるから」
 あの声は、いつも僕を導いてくれていた。
 僕の傍にいてくれる、とても優しい人だから。

【金色のコルダ2:志水×香穂子】
 猫の名前って何でもいいんですね。

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036.夏が終わる日

 夏の終りが日に日に近づいてきた。
 まだ高校生の彼女は、もう少しで学生としての日常に戻ってしまう。
 それはほとんど会う時間がなくなってしまうことを意味していた。
 会おうと思えばいつでも会える。
 そう思うとしたし、事実そうだ。でも、逢う時間が限られてくるのも事実で。
「涼さん?暗いですよ」
「っ!・・・きらでしたか」
 いきなり背中を叩かれて、誰かと振り返ればいたのはきらだ。
「何暗くなってるんですか。今日も、子供たち、涼さんに会えるの楽しみにしてますよ」
 もちろん、私もですけど。
 冗談のように笑顔で付け足された言葉。
「先、道場行ってますから、用意できたら来てくださいね!」
「え、あ・・・はい」
―――私もですけど
 夏が終わろうとしていた日。
 夏が終わっても、私たちはこれからもずっと続いていく。
 会える日にちが少なくても、それを埋められるだけ長い年月を一緒に生きていけばいい。
「私は、きらと共に人生を歩める日を楽しみにしています」

【水の旋律2〜緋の記憶〜:涼×きら】
 意外と独占欲強いよね。

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037.わかっていると君は言う

「分かってるけど、好きになっちゃったら仕方ないかなって」
「・・・いや、でもさ。相手、教師じゃん」
 しかもあの金やんだ。わざわざあれを選ぶ意味がわかんないって。
 そりゃ、造作は整った方だろうって分かるけど、だからってなあ。
「・・・それ以前に、高校生なんて相手にしなくない?」
「・・・・・・・・・それも分かってるから」
 全然分かってない。
 二言目には面倒くさいが口癖の金澤紘人が高校生なんて相手にするような恋愛するわけないでしょ?
 客観的に見れる分だけ、あたしの方が分かってるわ・・・・。


 なんて思ってた6年前。
 こんなに早く、親友と元『恩師』の結婚式に出席するなんて。
 分かってなかったのはあたしの方だった?

【金色のコルダ:金澤×香穂子+天羽】
 40目前で結婚式な金澤は恥ずかしすぎて死にそうだといい。

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038.灰色の時間

 灰色の数年間。
 いつだって心は澱んでいた。
 あれだけ信頼していたのに。本当の親戚とさえ思っていたのに。
――好きだった人たちなのに。

 裏切られたという思いだけで生きてきた、灰色の数年間だ。


 この思いに光が差す日が来るなんて、思っていなかったんだが、な。

【ラスト・エスコート2:香希×芹香】
 発売後すぐに書いたんだったかな。

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039.童話の王子とお姫様

 童話の中の王子様とお姫様はいつも幸せそうで、いつか自分もそんな恋愛ができるんだと思ってた。
 幼かったあたしは「運命の人」がいるんだと思っていた。
「そう思ってたんだけどさ。どこで間違ったんだろう・・・。どう思う?夏実」
「いや、あんたの場合はいくらでも周りにいたじゃない」

『運命の人』候補4人を思い浮かべて、苦笑するしかなかった。
 でも、一番苦笑したいのはあの4人だろうけど。

【フルハウスキス2:むぎ+夏美】
 フルキス2の総受けっぷりにはびびった。

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040.間接キス

「お嬢ちゃん、なーに飲んでるの」
「うん?」
 きらの隣にひょいと腰掛ける。
「コーヒー。美味しいよ?」
「へえ、ブラックで飲めるんだ」
 甘い方がなんでも好きだと思っていたけれど、そうでもなかったらしい。
「じゃあ、オレも、もらおうかな」
「そう?今淹れてくるから――」
「こっちをもらうに決まってるでしょ?」

―――うん、美味しい。

「うわ、甘っ!?」
 ちゃんと笑って美味しいよと言うつもりだったのに、予想外に甘すぎる。
「だって砂糖入ってるもん」
 ・・・・さっき何も言わなかったじゃないか。
 恨みがましく見ると、いたずらっぽく笑われるのみだ。
「・・・はあ」
 たまにはこれでもいいか・・・。間接キスだけはもらったわけだし。

【水の旋律2〜緋の記憶〜:吉乃×きら】
 たまにはやられるといいんだ、吉乃は。

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041.ナーサリーライム

 暖かい日差しの差し込む木陰。
 時間の流れもゆったりとして、このまま眠ってしまいたいほどだ。
「ママ、お歌歌って?」
「歌?何がいい?」
 結婚してすぐにできたこの子はいつも笑っていて、本当に天使のようだと思うほど愛しい。
 あの人の子供だと思うと尚更だ。
「眠るときの!」
「おいおい、音痴だぞー、ママは」
「紘人さん!?」
 くつくつと笑いながら近づいてきた紘人さんは、子供を挟んで反対側に足を投げ出した。
「じゃあ、パパが歌ってくれる?」
「俺?俺が?」
「そうだねー、パパはお歌上手だもんねー」
 言ってみれば「ねー・・・って嫌味か・・?」などとぼやかれた。
「ヴァイオリン持ってきます。懐かしき木陰なんてどうですか?」
「子守歌じゃないだろ」
「意味なんて分かんないんですから、あの優しい曲がいいですよ」
 私の大好きな曲を、この子にも伝えたいから。

【金色のコルダ2アンコール:金澤×香穂子+子供】
 子供ネタ嫌いな方は申し訳なかったです…。
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042.やさしい嘘

「あなたのことは、愛していません」
 1回言われるごとに、心から血が流れそうなほどだった。
 何を言われているのか分からない。
 この上なく残酷で、あたしの2年間を全部否定する言葉。
『愛していなくてはならない』なんて思ったことない。
 理事長を愛したのは義務じゃなかった。心から思っただけなのに。
「愛していません」


 でも、葵さんとの幸せを手に入れて、少しだけ大人になった今なら分かる。
 あれは、残酷すぎる言葉であったけれど。
 それと同時に、優しすぎるほどにあたたかい嘘だったんだね――。

【フルハウスキス2恋愛迷宮:東條×むぎ】
 東條は相変わらず優しすぎる人でした。平手打ちできなかった唯一の人だ。

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043.長い旅

 見ていた世界は狭かった。
 小さな頃は外の世界も見られたけれど、幼い自分には限界があったから。
 大人になればもっと外の世界を見ることができると楽しみにしていたのに。
 実際なってみれば、見られるのは病院の窓から見えるものが全てになった。

 でも、そんな時間はもう終りだから。
 ひとつの場所に留まって、自分の傍を通り過ぎていく人たちを見る時間はもう終り。
 君と一緒だよ。
 ずーっとね。
 これからの時間、全部君にあげるから。
 今は不安なんて何もなくて、ただどんな日々が待ってるのか楽しみなだけ。
 そうだね――長い旅に出る、そんな気持ちかな。

【乙女的恋革命ラブレボ!!:神城×ヒトミ】
 アフターエピソードのあとくらいを考えてみました。

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044.祭のあと

「終わった、か」
 生徒が帰った学院は、静まり返って気味悪いほどだ。
 昨日、今日は文化祭。今日は文化祭の中でも注目を集めた、コンクールメンバー中心のアンサンブルコンサート。
 そう言や、日野のドレスは似合ってたっけ。
 褒めてやったときの慌てたような反応は、思い出しても少し笑えてしまう。
 その後は、毎年恒例のダンスパーティーだ。生徒だけで楽しめるようにと、教師はほとんどがパーティー会場には向かわなかった。
 生徒指導だけは行ったようだったが、他の教師達は自粛だ。文化祭当日なのに仕事をしててバカらしかった。
 だが、他の教師達が揃って行ったとしても自分は行かなかっただろう。
 どうせ踊れない。
 生徒たちの下手なダンスを見つめ続けるしかないのだから。
「・・・・・・・・少しだけ、見たかったけどな」
 日野のドレス姿は本当に似合っていて、コンサート前の褒め言葉は本心だった。
 あいつがどう受け止めてるかは知らないが、心からの言葉だった。
 今日、誰と踊ったのかなんて聞けるわけもなく、どうだったかという感想すら聞くことができなかった。


 とても文化祭なんてバカ騒ぎがあったとは思えないほどの静けさに包まれた学院を後にする。
 誰と踊ったかなんて聞いたら、格好悪いほどそいつに嫉妬したかもしれない。
 どうだったかなんて聞いたら、同じ空間にいられなかったことを悔しく思うかもしれない。
 聞かなくて良かった。見ないでよかった。
 あいつとは教師と生徒の関係で終わるのだから、これ以上踏み込んだら―――。

 コンクールからこっち、何度言い聞かせたか分からなくなってきた言葉をもう一度呟いた。
「未来ある『生徒』だろ・・・」

【金色のコルダ2:金澤×香穂子】
 金澤とダンスできない意味が分からない。

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045.ただ、呟いただけ

「・・・独り言だ」

 とても独り言だなんて思えない言葉。
『俺がお前を心配したら迷惑か?』
 迷惑なんてあるはずもない。
 でも、何で心配してくれるのかが分からない。

 ただの独り言なら、もっと聞こえないようにして欲しい。
 結局はホストなんだから、本気になんてなれないのに――・・・

【ラスト・エスコート2:香希×芹香】
 発売前は香希が最萌えになるなんて考えもつきませんでした。

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046.小さな賭け事

「ね、二人ともちょっと賭けてみない?」
 僕の言葉に、月森と土浦は怪訝そうな表情を隠そうともしなかった。
「・・・賭け?」
「悪いが、俺はそんなことをするほど暇じゃない。失礼する」
「月森は相変わらず付き合い悪いなあ」
 僕の非難の声を気にするような人間じゃないのが月森だ。既に背を向けてる。
「悪いな。俺もパスだ。興味ない」
「日野さんのことなのに?」
 苦笑して背を向けようとした土浦も、背を向けていた月森もピタッと止まる。
(・・・本当にこの二人は分かりやすい)
「賭けの対象は日野さんと冬海さんのバイト先での写真、らしいよ?」
「らしい?」
「天羽さんが言ってた。新聞部で俺たち三人を使って企画やりたいらしくて、その餌。僕はもちろん乗るけど、どうする?」
 呆れたというようにため息をつく二人。
 バイト先なんて、天羽が撮ったのでもなければ盗撮じゃないかと言いたげだ。
 僕だってそう思う。
 それに、乗ったところで「賭け」だ。3人全員が貰える物でもない。
「悪いが・・・」
「日野さんも冬海さんも、メイド服らしいよ?普段、絶対見られない服じゃない?」
 二人の動きが一瞬止まって、思わず笑ってしまう。
「じゃあ、天羽さんには了承しとくね。賭けの内容は後で聞いとく」
 何をやらされるのかも知らずに、賞品だけで天羽さんに釣られるのはよくないと分かっていても。
 どうしたって乗せられてしまうんだろう、僕たちは。

【金色のコルダ2:土月地→香穂子】
 2年生トリオがいいなあと思った結果(の残骸)がこれです。

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047.恋敵

「芹香ちゃん!」
 え? 思ったときには、涼が芹香を出迎えていた。
「今日は早いね。てか、一人?」
 楽しそうに話しかけている涼が見える。影になっているが、芹香も笑っているんだろう。
「涼、テーブルに戻れ。お客様を置いてきてどうするんだ」
「うわ、そうだった。ごめんね、芹香ちゃん。オレのこと指名してくれれば、すぐに行くから!」
 慌しく戻っていく涼に、苦笑している天祢さんと芹香が見えた。
 そりゃ、苦笑もするだろう。ロゼ指名もまだなのに、今から涼のロゼは芹香以外考えられないのが手に取るように分かる。
 プロなら、せめてイヴが過ぎるまでは客を平等に扱うべきだとは・・・考えないんだろうな、あのバカは。
「すみません。じゃあ、芹香ちゃん、今日の指名はどうしますか?」
「そうですね・・・」
 ふと辺りを見回した芹香がこちらを見た。
 視線が思いっきりぶつかってしまう。
「竜崎さん、大丈夫ですか?」
「いいですよ。里桜ちゃんの時間もすぐに終わりますから」
 天祢さんが芹香に笑いかけ、すぐに真顔になって言う。
「直夜に指名入りました」
 その瞬間、思わずふと笑ってしまう。
 目の端に捉えた涼が分かりやすいくらい残念そうに肩を落としたからだ。
 客にまで苦笑され、肩を叩かれている。
「里桜、悪いな」
 仕方ないというようにため息をつく里桜に軽く謝り、芹香を迎える。

「いらっしゃいませ、お姫様」

 落ち込んでいる涼の席の前をわざわざ通って、芹香を席まで案内してやった。
 涼相手に子供っぽすぎることは、俺自身が一番分かってる・・・。

【ラスト・エスコート2:竜崎×芹香←涼】
 竜芹も涼芹も大好きなんですよ?

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048.星空デート

 空に瞬く星、浮かぶ月。
 いつだって、月を見れば心が癒されたんだよ。
 君の近くにはいられないけれど、いつだって君を想ってる。
 それにね。
 最後に君と過ごした夜は、月が綺麗な夜だった。
 君に好きだと言って貰えたあの夜は、本当に綺麗だった。
 思い出の中なら俺は君に愛していると告げられるんだ。

 君は今、この平泉にいるね。
 距離は近いのに、きっと俺も君も逢いたいと願っているのに。
 どうしても逢えない夜もある。

 愛しているよ。
 告げられない言葉は、あの夜の思い出の中の君に何度も告げよう。
―――満月をこれほどまでに慕わしく感じるのは、君のせいなんだろうね・・・

【遙かなる時空の中で3十六夜記:景時×望美】
 タイトルでバカップルっぽいのを期待された方には土下座で謝らせてください…!

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049.薔薇の香水

 休日の午後。日々大学と家の雑事に追われている身を休める時間だったはずなのだが。
「・・・いい加減、どれにするか決めろよ」
「そんなこと言われても、形可愛いの多いですし」
「香りで決める物だろう」
 形にまでこだわりたい気持ちはよく分かるが、ここは突き放す。
 一体、どれだけこのフロアにいると思ってるんだ。
 休日に呼び出されたと思ったら、香水を選びたいから付き合えなどと言う。
 それで来る俺も俺だ。
「えー?・・・・そうだ、先輩の一番嫌いな花って何ですか?香りでもいいです」
「好きなものを訊くのが普通だろう?」
「そうですけど。いいから早く!」
 何なんだ。
「そうだね・・・花は基本的には何でも好きだけれど。・・・・・・・・薔薇かな。刺がある辺り、人間を馬鹿にしているよね」
 香りを嫌いだと思ったことはないが、刺だけは気に食わない。
「じゃあ、薔薇の香水にしようっと」
「待て。嫌がらせが目的なのか?」
「先輩が好きな花って薔薇ってことじゃないんですか?」
 頭痛がしてきた。
「先輩の隣に、もう1年もいるんですよ?先輩の一番好きな花は薔薇じゃないけど、薔薇も好きなんだろうなってことくらいは分かります」
「どれだけ俺は複雑な性格をしていると思われているんだ?」
「そりゃもう、複雑怪奇極まりない性格をされているかと」
「怪奇は余計だ」
 休日に呼び出された挙句の会話がこれなのに。
 妙に楽しいと思う俺は、本当に―――

【金色のコルダ:柚木×香穂子】
 このくらい分かりにくいのが柚木だと思うのは歪みすぎかもしれない。

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050.Draw

「珠洲、帰るぞ」
「兄貴、俺もいい?」
 壬生の兄弟が珠洲の守護者として村に残って初めての冬。
 一面雪に覆われ、寒いが幻想的な景色を楽しめる季節がやってきていた。
「うわ、克彦さん。ごめんなさい、ゴミ当番が・・・」
「そんなもの、他の奴にやらせろ。帰るぞ」
 克彦が乱暴に珠洲の手を取ると、ハシッとその手を掴む手が伸びた。
「・・・・・・・・重森」
 苦々しく呟かれる言葉に、人の悪い笑みを浮かべる晶。
「壬生先輩。珠洲のことは俺が責任を持って家まで送りますよ。別に、珠洲の守護者はあなただけではないのですし」
 なあ陸。
 後ろにいた陸に振れば、もちろん同意の言葉が返ってくる。
「だが、珠洲は仮にも俺の恋人だからな。ただの守護者のお前にまで世話はかけないさ」
「壬生先輩が珠洲の恋人だとしても、一応俺が筆頭守護者なことに変わりはないと思いますが?」
「一応、な。名目だけだろう。――それに、未練たらしい男は嫌われるぞ」
「―――独占欲を隠すこともできない男も嫌われますよね」
 こんないがみ合いが毎日続いていた。

【翡翠の雫:克彦×珠洲←晶】
 晶の保護者っぷりに萌えずにはいられない。

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051.悩みの種

 悩みの種なんて、探せばいくらだってある。
 どうしたってきらが俺といると居心地が悪そうだとか。
 俺のいる前できらが他の男と話しているのが気に食わないだとか。
 きらと一緒にいると、決まって式部が邪魔してくるだとか。
―――まあ、全部きらに関係することばかりなわけだが。
 きらに出会う前までは、女のことでここまでイライラすることがあるなんて思っていなかった。
 家の問題が山積していて、恋愛なんて二の次三の次だ。
 それでも、きらに出会ってからは家の問題よりも、きらのことで悩まされてる。
 これを式部なんぞに言った日には、腹抱えて笑い転がられることは目に見えてるから、絶対に言わないが。
 まあ、あれだ。目下の悩みは。

 いつまでも父親面な手塚が鬱陶しいってことだ。

【水の旋律2〜緋の記憶〜:康秀×きら】
 安曇って、手塚のこと本気で嫌いなんだなあ…(いろんな意味で)

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052.なんでもない日常

「笙子ちゃん、帰り少し喫茶店寄って行かない?」
 香穂先輩と合奏していられるのも、あと数ヶ月。
 コンクールで出会って、去年の先輩のオケコンサートまで、ずっと一緒だった先輩の卒業が目前まで迫ってきた。
「私は、構わないです。でも、先輩帰りが遅くなりませんか?」
「私は平気だよ。笙子ちゃんの家って物凄く遠いでしょ?私の家は近くだもん」
 そう言ってにこっと笑う先輩は、いつ見ても輝いていて、本当に眩しい存在だった。
 そして、こんな時よく思う。
 あの人も、先輩のこういうところに惹かれているんだろうなあって。
「じゃ、帰ろっか。もう寒いからねー。温かいもの飲みたいなー」
 陽も随分前に落ちて、辺りは真っ暗なのに。
 いつだって先輩は私も前を歩いて、こうして一緒にいてくれる。
 来年からはもう先輩と一緒にいることはできなくなる。
 私がこうして一緒にいる時間がなくなる代わりに、隣にはずっとあの人がいることになるんだろう。
 それが寂しくて、切なくなった。
 でも、
「私も、温まれるもの飲みたいです」
 今は、こうして一緒にいられる時間を大切にしたいです。

【金色のコルダ2アンコール:香穂子+冬海】
 しつこいようですが、断じて百合は狙ってないんです。

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053.歌を聞かせて

「芹香ちゃん!ね、カラオケ行かない?」
 朝からドアをガンガン叩かれ、芹香の名前を大声で喚き散らしてきたのは、やっぱり玲司だった。
 確かにインターフォンなんてものついてない。叩くしかないのは、それは仕方がない。
 とは言え、力加減に注意しないと、冗談ではなく壊れるのが河合荘だ。
 こんな寒い時期にドアが壊れるのは、芹香じゃなくても冗談じゃないと思うだろう。
 そして、芹香が仕方なしに開けてみれば、冒頭だ。
「カラオケ?」
「うんっ。もちろん、僕とふた・・・」
「じゃあ、天祢さん誘ってみようか。あ、香希さんも来るかな。あと、マコトくんと竜崎さん」
「へ?」
「今から電話して平気かな?ちょっと待ってて!」
「・・・・「ちょっと待って」は僕の台詞・・・」
「ん?」
 玲司の脱力した台詞もどこ吹く風で電話をかけ始める芹香に、今度こそ本当にため息をつく玲司。
(綺麗に忘れられてる涼って、誰にロゼ贈るんだろ・・・)
 涼のことも言った方がいいのかどうか迷う。
(涼の歌聴きたいっていうお客さん、多いのになあ)
 確かに下らないことではあるけど、そのくらいの興味は持ってあげればいいのに。
 涼の不憫さに、涙が出そうだった。

【ラスト・エスコート2:芹香+ホスト】
 天祢の歌が気になりすぎる。

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054.ひとりぼっち

 凄く小さい頃には誰かと一緒にいた気がする。
 誰よりも私を大事にしてくれて、私もその人のことが大好きで。
 でも、ペンダントを貰った日。
 その人は私の世界から消えてしまった。
 学校で友達といても、街の人たちと笑いあっていても、心の奥底では「ひとりぼっち」だったのかもしれない。
 時が経つにつれて私はその人のことも忘れていったけれど、どこかで求めていたような気もする。

「――ジェ、アンジェ。僕の可愛い奥さん」
「ひゃっ」
 頬にぴたっと冷たいグラスが押し当てられて飛び起きた。
「お目覚めですか、奥さん」
「びっくりしたじゃないですか!」
「はは、ごめんごめん。寝顔も可愛かったんだけど、せっかく一緒にいられるんだから、起きているアンジェを見ていたいなって思ってね」
 いたずらっぽくそう言って笑うベルナールさんにつられて、つい笑ってしまう。
「お。やっと笑ってくれたね。僕の可愛い奥さん。――これからずっとその笑顔を守って行けるといいな」
 その笑顔に気づく。
 この優しい人がずっといてくれる。そして、ずっといてくれた。
 私が忘れても、私の傍にずっとペンダントと一緒にいてくれた。
 ベルナールさんの写真の入ったペンダントを握りしめて、とびきりの笑顔を返した。

【ネオ・アンジェリーク:ベルナール×アンジェリーク】
 EDの可愛い奥さん発言に「ええっ!?」と思った人は同志です。

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055.アニバーサリー

「お前、顔にやけてるぞ」
「え、そう?でも楽しみなんだから、仕方ないよね」
 昼休み。たまたま購買で加地と会い、そのまま屋上に出てきた。
 春の日差しが暖かい。
 こんな日に外で音を奏でられないのが残念のような気がする。
 俺はそんな風にぼーっとしたいたのだが、隣の加地はずっと意味もなく笑っていて気持ち悪い。
「楽しみ?」
「うん、明後日香穂さんとデート」
「あー・・・・」
 訊いた俺が馬鹿だった。加地が日野以外でこれほど喜ぶことがあるはずもなかった。
「つっても、もう何度もデートくらいはしてるじゃないか」
「えー?だって、明日は10回目のデートだよ。記念じゃないか」
「そうだったな。お前は過去9回とも今みたいに嬉しそうに報告してきたな」
「いけない?」
 そう訊かれると何も言えないが、惚気られて気分がいいと言えるほど寛容じゃないんだ俺は。
「だって、香穂さんと一緒にいられる日は、僕にとってはいつも記念日みたいなものだよ」
 真顔で言ってる加地に、俺が言えることは一つだけなんだろう。


「お前絶対病院行った方がいい」

【金色のコルダ2:加地×香穂子+土浦】
 加地に突っ込めるのが土浦しかいない…!

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056.モーニングコーヒー

 毎日毎日遊びに来るホストたち。
 今の心境はどうあっても「・・・変なものに懐かれた」でしかないけれど、ポジティヴに考えてみよう、私。
 今目の前にいるのは、玲司くん、香希さん、マコトくん、竜崎さん。うん、目の保養。
 でも、実際問題この人たちを目の前にすると思い出すのは一人だけなわけで。
 そうすると、自ずと恥かしい過去が蘇ってきちゃったりもして。
「・・・ねえ、朝起き抜けにコーヒー飲むなら、やっぱりブラックなのかな」
「いきなりどうした?芹香ちゃん」
 竜崎さんが覗き込んでくれるのも、いつもなら喜ぶところだけど、今日は無理だ。気にしてられない。
「朝起きてコーヒー勧められて、砂糖いっぱいお願いしますとか子供っぽすぎたでしょうか!?」
「話が見えないぞ、安藤」
「香希、少しは状況察してやれよ。この前、芹香ちゃん朝帰りだったんだから」
 竜崎さんの台詞に玲司くんが勢いよく、
「マジで!?聞いてないんだけど!芹香ちゃん!どういうこと!?」
「玲司うるさい。芹香だって色々あるんじゃない? で、誰のところに泊まったの。まさかとは思うけど、神崎のところじゃないよね?」
「ほら、マコトだって気になるくせに」
「俺のところに来るわけないだろ!」
 香希さんの台詞には突っ込みたいところもあるけど。
 やっぱり言うんじゃなかった。
 そして、やっぱり思うのは天祢さんのことだけだった。

【ラスト・エスコート2:天祢×芹香+ホスト】
 ↑の香希の発言は本気でどうかと思う。

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057.あどけない面影

 休日の昼下がり。朝から娘と一緒に絵本を読んだり、テレビを見たりなんてこと、するとは思わなかった。
「パパ、何笑ってるの?」
「お。おはよう、起きたのか」
「もうお昼過ぎたよ。こんにちは、でしょ」
 娘の律儀な訂正に苦笑しながら、こんにちはと言い直す。
「なんで笑ってたの?」
「んー?いや、別に。可愛いなって思ってただけだ」
「可愛かった?」
 嬉しそうに言う娘に頷いて、
「もう少し寝てろ。あとで起してやるから」
「はーい」

 久々に見た娘の寝顔は、あいつの寝顔をそのまま幼く、あどけなくしたようで。
「紘人さん?なんで娘の顔見てそんなに笑ってるんですか?」
「香穂子。いーや、どこかの誰かさんも、似たような顔で寝てるよなーと思ってな。誰とは言わないが」
「その誰かさんが私以外の人だったら、今すぐ離婚しますからね」
 あの恋を失ってから、こんなにも幸せだと思える恋ができるとは思ってなかった。

【金色のコルダ2アンコール:金澤×香穂子+子供】
 たまにはほのぼのしてもいいかなあ…とか考えてみた。

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058.言えない一言

「ばーか」
 東條の隣で満面の笑顔のあいつに、一言そう言い放つ。
「なっ・・・!」
「っく、この俺がここまで振り回されるなんて思ってなかったよ。東條さん、あんたも苦労するな」
 可哀相にと言わんばかりに言えば、
「いえ、むぎがいてくれるだけでいいんですよ。苦労させてもらえる喜びもある」
「ちょっ、東條さんまで!あたしが苦労させること前提ですか!?」
「当たり前だろ。俺がその立場にならなくてよかったぜ」
 俺の一言でむぎが一瞬にして落ち込んだ。
「・・・・・・・・・・ごめん」
「だからお前は馬鹿だって言ってるんだ。謝るな」
 お前の恋人にはなれなくても、後見人としてずっとお前を見守れる。
 お前が生きているだけで、俺はちゃんと幸せだから。
 お前が生きていて、東條の隣でいつも馬鹿やっててくれたら、それだけで安心できるから。

―――もう、愛してるなんて言えなくなっても、いつまでもお前だけを愛してるよ

【フルハウスキス2恋愛迷宮:東條×むぎ←一哉】
 一哉と部屋まで行ったむぎってことで。

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059.雨だれ

 雨がずっと降り続いている。ずーっと。
 梅雨の時期でもない。
 ・・・・・彼女が、泣いてるんだろうか。
 白石が天泣の娘の可能性があると言われ、高校も転校してきた。
 今すぐにでも白石の隣に行って慰めてやりたいのに。
「・・・・・早くどうにかしろよ・・・っ」
 あいつが選んだのは一謡のやつだった。
 俺なら白石の苦しみも分かってやれるかもしれないのに。
 今すぐ雨を止ませてやれるのに。

 ずっと昔の、彼女を九艘にした約束を後悔しながらも、思う。
 確かにあの時と全く同じ気持ちではないけれど、一緒にいたいと思う気持ちだけは変わってない。
 降り続く雨を眺めながら、今彼女の涙を止めてあげられない自分をただただ呪いたかった。

【水の旋律:一謡×陽菜←拓哉】
 陽菜の相手は3人からお好きに選んでください。

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060.プレゼントは君

「・・・って言ったら、どう思う?」
「何言ってるの?って思う」
「あーもーっ、芹香ちゃんはどうしてそう言う言い方するかなー!?」
 今日はオレの誕生日で、半年掛りでようやく彼女になってくれた芹香ちゃんが家に遊びに来てくれた。
 それならもちろん貰いたい物も一つだ。
 あ、芹香ちゃんの手料理は別としてね。ホント美味しいよね。
 で、言ってみたらこんな答えだ。がっかり通り越して、寂しくなってきた。
「あはは、ウソウソ。うん、とにかく夕ご飯食べてからね」
「マジ?」
「うん?冗談」
「えーっ」
 今日はオレの誕生日なのにこの扱い・・?
 オレって、本当に愛されてるのかな・・・・。

【ラスト・エスコート2:涼×芹香】
 本編はお互い思いやってたはずなんだけど…あれえ?

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061.あたりまえの奇跡

 彼氏、恋人――。
 誰かのそんなポジションになりたい。そう思っても、それは必ず叶うとは限らないよね。
 もちろん叶ったりもするけどね。
 でもね、思ったんだ。友達だったら高確率でなれると思わない?
 少しでも相手に好意を抱ければ、それだけで友達にはなれるもの。
―――それは言葉だけなら簡単なはずなのに、半年前の僕には、酷く遠いポジションだったんだ。
 本当に思う。心から。
 転校して来てよかった。
 あの春、君に出会ってから転校を決意するまで時間は掛からなかった。
 自分で言うのもおかしいけど、あの時の僕自身の行動力に少し感謝したい。
 君と「友達」になれただけでも、僕の人生は輝く気がするよ。

【金色のコルダ2:加地→香穂子】
 ホンット、こんな中途半端な地日ばっかりで申し訳ないです。

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062.デイドリーム

 夏の熱さを和らげてくれるような風が気持ちいい。
 このまま何もなければ、香穂と一緒に練習室にでも行って、帰りは――
「いた!土浦ー!」
「よう、加地か。どうした?」
 満面の笑顔で俺を探すなんて。
 今までの経験からして、いい事が起こったためしはない。
 頼むからこっちに来るなと言いたいのを必死に我慢する。
「ね、ね。聞いて聞いて」
「うるさいな、聞くから。落ち着けよ」
「さっきね」
 何でこう満面の笑みなのかと身構える。絶対変なこと言い出すに決まってる。
「日野さんと付き合うことになった!」
「よーし、そんなに俺にしめられたい訳だな?」
「えっ、ちょ・・・っ」
「なんで香穂がお前と付き合うんだよ」
「・・・・・・・・・・あれ?何でだろ・・・・さっき、木の下で寝てたら日野さんが来て・・・あれ?」
 どう考えても、夢と現実が混ざってる。
「でも、今日野さん隣にいなかったし・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・夢?」
「当たり前だ。非現実的な妄想ばっかしてるんじゃない」
「うわ、酷い言い様。・・・まあ、夢の中だけでも日野さんと付き合えたんだからいいのかなあ」
 思い出に大事に覚えておくことにするよ、などと笑顔で言ってくれる。
「今すぐ忘れろ」
 夢の中だって、あいつは俺だけの彼女なんだから。

【金色のコルダ2:土浦×香穂子←加地】
 加地をなんだと思ってるのかと言う話ですね…。

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063.彼のネクタイ彼女のルージュ

 7月7日、七夕の夜。
 一人で見上げる星散る夜空。
 約3ヶ月いたこの国にも、あと数週間で別れを告げて、ようやく日本へ戻れる。
 もう少しで忙しくなるからと、日本への土産を買いに来たわけだが。
「なーんで、こんな物買ったかねえ・・・」
 まだ恋人でもなんでもない一人の少女を思い出す。
 子供っぽくて、無邪気で、何でも一人で背負おうとして、頑張りすぎなほど一生懸命な少女。
 そう、まだまだ「少女」なのに。
「つーか、恋人でもない教え子にこれ贈るってどうなんだ」
 買ってしまった口紅に肩を落としつつ、「日野受け取るかぁ・・・?」などと呟いてしまった。
 らしくない。

 7月7日の夜。
 滅多に見られないほど空は晴れて、小さな星々まで見渡せるような夜。
 もうすぐ、アメリカに行っていた音楽教師が戻ってくる。
 たった3ヶ月しか離れていなかったけれど、電話とメールだけじゃ寂しかった。
 でも、本当にもうすぐ帰ってきてくれる。また学内で彼を見られるのだ。
「・・・買っちゃった・・・」
 検査お疲れ様でした、そう言って空港でプレゼントを渡そう。
 そう思って買ったのは、ネクタイだった。
 プレゼントの相手――金澤が滅多にスーツを着ないのは分かってる。
 でも、式典では着なくてはいけないのだから、年に1回でも、2回でもいい。身に着けてくれたら嬉しい。
 喜んでくれるかなあ。
 アメリカに繋がる空を見上げながら、向こうは今何時だろうと考えた。

【金色のコルダ2アンコール:金澤×香穂子】
 なんで七夕なんだ…?

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064.stay with me

 恋を失って、音楽も失って。自分の人生だと思っていたものを何もかも失ったと思っていたのに。
「金澤先生」
「ん?」
 いつの間にやら大切だと思える存在が傍にいた。
 我を失うような想いではないけれど、いつでも彼女の傍にいて、彼女を支えたい。
 ただそう思えるのが今だ。
「もうすぐ出国・・・なんですね・・・」
 恋人――と今すぐ言い切れる関係ではないが、互いの想いだけは思い違いではなく知っている。
 周りの恋人たちに比べれば随分と曖昧な関係ではあるが、教師と生徒よりは踏み込んだ関係であるはずの奴がいきなりアメリカ行き決定だ。
 そりゃ、少しは寂しいと思うだろう。
「悪い」
「待ってていいんですよね?」
「え?」
 いつもいつも大事そうに抱えているヴァイオリンケースを尚更強く抱きしめるようにして、
「・・・・・・夏休みに帰ってきてくれるの、待ってますから」
 一言言うごとに緊張が増すのか何なのか、涙目になっている。
「それに、検査してる時もずっと電話とかメールとかしますから」
「そりゃ、寂しくならなくてよさそうだ。ありがとな」
 頭を撫でてやろうと手を伸ばす。
「だから、絶対一人だなんて思わないで下さい。私がずっと傍にいるから。いさせて、・・下さい」

【金色のコルダ2アンコール:金澤×香穂子】
 出国前日くらいを想定して書いてみた。

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065.嵐

 バタバタと過ぎ去って行った日々。
 一哉くんの問題が起こった去年からの半年間も忙しかったけど、瀬伊くんとロシアに来てからもずっと忙しなかった。
 ロシアへの渡航手続き、居住手続き・・・その他諸々の事務処理は瀬伊くんの両親に任せてしまったけれど、生活に慣れるのが大変だった。qq  だって、ロシア語なんて全然分かんないし!
「むぎさんもすぐに慣れますよ」
 なんて、お義母さんの励ましと、お義父さんの温かさ、何よりも瀬伊くんの存在で何とかやっていけてるようなもの。

「・・・やっぱり、ロシアは辛かった?」
「え?」
 珍しく二人っきりの夕食。今日は、ご両親揃って演奏会に行かれるとかで、夕食は二人だけだ。
「うーん、むぎはまだ17歳だし、日本がよかったのかなーって」
 滅多に見られない瀬伊くんの本気の落ち込みように、思わず笑ってしまう。
「えー、むぎ、何で笑ってるのさ。僕、本気で心配してるのに」
「あはは、だって今すっごく大変だけど、それ以上に楽しいよ?」
 瀬伊くんがいて、瀬伊くんのご両親がいて。
 ここではないけれど、イギリスにはお姉ちゃんもいる。
 失くした家族ではないけど、また自分にも家族ができた。
「嵐みたいにバタバタしてるけど、大変だけど、楽しくて充実してるのだけはホントだよ」
 ロシアなんて、瀬伊くんが言ってくれなきゃ来ることもなかったし!
 そう冗談みたいに言えば、ようやく瀬伊くんも笑ってくれたんだ。

【フルハウスキス2恋愛迷宮:瀬伊×むぎ】
 仲のいい家族になるといいなあ。

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066.やきもち

「なぜ、そんなに怒っているのか分からないのですが、何かありましたか?」
「・・・・・・・・・・・・何もないです」
 せっかくのデートで、あたしは大学があるからってことで夕方から待ち合わせてのデートだった。
 先に待ち合わせ場所に着いたって連絡があったから急いだのに・・・・。
 さっき、女の人と宝石店から出てきたよね。凄く楽しそうに。
 店の前で別れたけど。でも、あんなに楽しそうに笑ってる東條さんを見るなんて、本当に久し振りのような気がする。
「何でもなくはないでしょう?・・・これで機嫌直していただけますか?」
 車を路肩に止めると、小さな箱を取り出す。2箱。
「え?・・・・・・・・これって」
「以前、好きだと言っていたでしょう?よく分からなかったので、選ぶのに苦労しました」
 喜んでくださるといいのですが。
 そう言いながら開けられた箱の中には、リングが入っていた。
「サファイアが埋め込まれているんです。こちらもね」
 もう一箱も、少し大きめのリング。
「結婚指輪にしては安すぎるので、婚約指輪ということで如何ですか?」
「い・・・如何ですかって」
「むぎさんと私のそれぞれの誕生石にしようかとも思ったんですが、間を取って9月の誕生石でもいいんじゃないかと」
「えっ、え?」
 あたしの動揺はお構いなしに笑顔で話を進めていく。
「最初はどうかとも思ったんですが、趣向が変わっていていいかと」
「もしかして・・・・・さっき一緒にいた人と、これ選んでたんですか?」
「見てたんですか?残念。私一人で選んだことにしたかったんですけど・・・見られてたのなら、仕方ないかな」
 選んでいるとき、むぎさんが喜んでくれるかななどと思って、楽しかったですよ。
 さりげなく付け足された言葉に、思わず笑ってしまって。
 東條さんに不思議な顔をされてしまった。

【フルハウスキス2恋愛迷宮:東條×むぎ】
 迷宮ED後は甘くっていいと思う。

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067.あの頃の僕ら

 顔をあわせれば喧嘩ばかりで。
 確かに互いを思いやっていたはずなのに、言葉はいつも乱暴だった、と思う。
 それは今でもあまり変わっていない気がする。
 でも、変わったところもあるんだ。
「九郎さん、初詣!行きません?」
「初詣?行くのは構わないが、譲はどうするんだ。いいのか?」
「譲くんも一緒なのは、明日行きましょう。今日は九郎さんと二人で行ってみたいです」
「なっ・・・」
「ダメ?」
「ダメ・・・ではないが」
 ・・・本当に変わったと思う。
「――そうだな。譲には悪いが、今日は二人だけで行くか」
 あの頃の俺たちよりは、素直になれたんじゃないかと思う。
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・若干だとは思うが。

【遙かなる時空の中で3:九郎×望美】
 譲には可哀想ですが、きっと二人だけで行くんだろうと思う。

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068.彼女の恋人

 朝から家中がそわそわしていた。
 皇が「彼女」を連れてくるから。
 それはもちろんむぎで、父も母も、むぎが俺の元恋人だということは知っている。
 真弓さんに至っては、むぎの前で「息子二人を気に入ってくれて嬉しい」などと言ったらしい。
 彼女らしい言葉ではあるが、正直複雑だった。
 本音を言えば、気に入ってくれるのは俺一人でよかったと思う以外ない。

 今日は結婚の報告なのだそうだ。
 以前来た時に、結婚後の話までしていたそうだから、近いうちにだとは思っていたが。
「あれ、依織。もう来てたのか?」
「皇」
 いつもよりもすっきりしたような表情の皇。晴々としている、とでも言った方がいいだろうか。
「彼女は?まだ来ないのかい?」
「あいつももうすぐ来るよ。出掛けに御堂から電話が来て、長くなりそうだったから先に来た」
 待っていてやればいいと思うのだが、きっとむぎちゃんに先に行ってくれと言われでもしたんだろう。
「とうとう結婚なんだね、皇。おめでとう」
「ん。ありがとう。・・・・・・謝るのは、止めておいた方がいいんだよな?」
「ふふ、そうだな、止めておいてもらおうかな。君を選んだのは彼女で、そうさせたのは僕だからね」

 心のどこかで皇を弟として見るよりも先に、むぎの恋人だとして見てきた自分がいたような気がする。
 普段は抑えているけれど、彼女が皇の子供を妊娠したかと思ったときの激情は今でも忘れられない。
 でも、結婚するのだと分かってしまえば、諦めもつく。
 俺ももう終わりにしよう。この先も、彼女に愛されていた時間が支えになる。
 将来、どんな生き方をするのかは分からないけれど、この想いが彼女の幸せだけを願う愛しさになればいい。
 どれだけ時間が掛かるかわらかないけれど、皇とむぎの未来を心から祝福できるように。

「皇、彼女と幸せにね」

 今はこの心からの一言だけで、許してほしい。いつか、ちゃんと思い出にするから。

【フルハウスキス2恋愛迷宮:皇×むぎ←依織】
 依織なりに吹っ切った、皇とむぎの結婚式インターバルだったらいいなと思う。

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069.プラチナリング

 イヴの夜に必要になるからと、店長からホスト一人一人に渡された指輪。
 普段、選ばれるばかりのホストが唯一持てるホストからの選択権。
 もっとも、ロゼ指名したいと思った客が他のホストを指名したら、渡したくても渡せなくなるわけだが。
「誰にするんだろうなあ、芹香ちゃん」
 一人戻った部屋で、大きな窓から見える、雪の舞う空をぼーっと見上げる。
 11月からの指名のほとんどは竜崎さんで、水曜日に顔を出したときは、決まってオレを指名してくれる。
 竜崎さんの指名を始めるまでは、ずっとオレを指名してくれてたし。
 竜崎さんさえいなければ、きっとオレが芹香ちゃんの永久指名貰えると思う。
「・・・・竜崎さんさえいなければってオレ・・・」
 今、物凄い情けないこと考えちゃったんじゃね?
 最近、店で会っても上手く行かないし、個人的に会っても喧嘩別れ。
「・・・・・・・・・はあ」
 ああもう!じっとしてらんない。
 竜崎さんには止められたけど、やっぱり会いたい。
 そう思ったら止められなくて、雪が降っているのも構わず、傘も差さずに家を飛び出していた。
 会えるかな。会えるよね―――?

【ラスト・エスコート2:涼×芹香】
 ↑イベントってどう考えても、竜崎イベの前振r(ry

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070.ふいうち

「どう思う?」
「どう思う、と言われても」
「俺たちにはどうしようもないしな。ありきたりだが、あいつが選んだのが理事長なら仕方ないんじゃないか」
「二人とも、諦めちゃうわけ?」
「つっても、どうしようもないだろ。・・・まあ、驚きはしたが」
「だよね、唐突すぎ」
「・・・・友人代表の言葉は、天羽さんがするんだったか」
「そこまで決まってるの?僕にやらせてほしかったのに」
「いや、お前やりたいのか?」
「やりたくないの?」
「俺はいいんだよ、ほっとけ。お前、あいつと理事長が結婚するってこと、ちゃんと祝えるのか?」
「無理に決まってるじゃない」
「ダメだろう、それでは。挨拶は天羽さんが無難にこなすだろうし、問題はない」
「でも、日野さんを褒める言葉なら、その場でいくらでも言えるよ?」
「お前、一回本屋行って来い」
「酷いなあ。・・・挨拶は冗談にしても」
「本気だった様に思うが」
「とりあえず、式には僕も出席しようかな。日野さんのドレスも見たいし、理事長の正装も楽しみだよね」
「え?」
「理事長のことは、盛大に笑ってこようかなって思うよ」
「ホントにお前は結婚式の意味を真剣に考えろ」

【金色のコルダ2アンコール:吉羅×香穂子←月土地】
 3人揃うとなんでこんなバカバカしい会話になるんだろう…?

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071.報われない努力

 どう頑張っても月森くんみたいに研ぎ澄まされた音が出ない。
 どんなに焦っても王崎先輩みたいにあったかい音が出せない。
 私が憧れた二つの音、どっちにも近づけなくて、コンクールの短い時間じゃどこを目指していいのかすら分からない。
 そんな風に毎日ヴァイオリンを弾きながら暗く落ちていった時だった。
「君だけの音があるはずだよ」
 ガヴォット好きなんだよね。そう言って、合奏しようと誘ってくれた。
 そして、その時に言ってくれた言葉だった。
 自分だけの音なんて、短い時間で見つけられるはずもない。
 誰もが長い長い時間の中で見つけていくものなんだから。
「香穂ちゃんは、やらないの?コンクール終わったらヴァイオリンともさよなら?」
「ヴァイオリン・・・・さよなら・・・」
「楽しくないなら続けなくてもいい。でもさ、自分の音を見つけたいって思うくらいには好きなんだよね」
「・・・・・・・そう、でしょうか」
「ならやってみてもいいんじゃないかな。俺、自分であんまり努力してるとは思ってないけど」


―――音楽は報われる努力って多いと思う


 本当にそうだろうか。努力が才能に勝つことなんて、音楽以外でも滅多にないと思う。
 でも、先輩の笑顔での力説があんまり素直だったから。
 だから、今でも私はヴァイオリンを好きでいるんだと思うんだ――・・・

【金色のコルダ:火原×香穂子】
 報われるか報われないか、努力か才能かの議論をしたいわけではないので…。

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072.翳りゆく部屋

 家を出て数年。
 もう慣れた部屋は一人で住むには丁度良くて、寝に帰るだけでは勿体無い気がするほどだった。
 たった数年なのに、あの子のいない場所は時間と共に翳が差す気がする。
 あの優しく、可愛らしかった子はどうしているだろう。
 僕が家を出るときは「お医者さんになるの」なんて言っていたけれど。
 本当に叶えられるだろうか。
 いつもいつも頭の片隅には、あの家に置いてきた小さな女の子がいる。
 あの子とまた暮らせる日は来るんだろうか。
 あの子がいれば、この翳ったように思える部屋も、途端に陽が差したように明るくなるだろう。
 会いたいな。
 僕の―――小さな天使。

【ネオ・アンジェリーク:ベルナール×アンジェリーク】
 家を出てからもずっとアンジェのことは忘れなかったと思う。

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073.君には秘密

「真緒姉さん、お茶・・・・持ってきた、ね」
「ありがとう、珠洲。珠洲の分はどうしたの?」
「あー・・・ええっと、陸がね!陸がさっき淹れてくれたから、それ飲んだよ。・・・じゃあ、またあとで来るね」
 珠洲に助けられてから早数ヶ月。
 それだけ経っても、珠洲は私に引け目を感じるかのように、なかなか打ち解けてくれない。
 きっと亮司のことがあるからだろう。私がいない間に婚約者を取ったようなものだ。
 それで珠洲が罪悪感を感じない方がおかしいのかもしれない。
「それもこれも、亮司が悪いと思うのよね」
 部屋の隅にいる沙奈に言う。沙奈はキョトンとこちらを見返すばかりだ。
「亮司が好きなのは珠洲だなんて、最初から分かってたことよ?それなのに私と婚約するから、話がややこしくなるのよ」
「は、はあ・・・・」
 いきなりすぎて分からないらしいが、そんなこと知ったことではない。
「少しは私のことを・・・?なんて期待しちゃったじゃない。そしたら、珠洲の親戚になりたかった?ふざけるなって話だと思わない?」
「えーと、そーですね?」
「でしょう?」

――――呪われればいいわよね?

 ピキッ。部屋の空気が一気に凍った。
 私と珠洲は元々、本当に仲がよかったのよ。あんなに可愛い妹いないと思うくらいに。
 珠洲には「優しい姉」だと思っていてほしい。
 でも、亮司は私たち姉妹の間に溝を作ったことを一生後悔すればいいと思うのよ。
 私は可愛い妹を取られて、亮司は可愛いお嫁さんをもらうんだから。
 多少辛い目に遭えばいいんじゃない?

【翡翠の雫:亮司×珠洲+真緒】
 こんな感じの本編なら尚萌えた気がする。

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074.迷い込んだ風

「ずっと一緒にいようね」

 あの約束はあの頃の俺にとってはこの上もなく大事で、きっとあの頃の陽菜も同じように思ってた。
 一緒にいたい。女の子として好きだったわけではないけれど、本当に大事だと思ってた。
 だから――――呪いにも等しいものだなんて、全然知らなかったんだ。
 一緒がよかったから、割血した。


「私は先輩のこと、恨んだりなんてしてません」
「九艘にしてもらってよかった、なんて軽く考えすぎかな」

 九艘の郷に迷い込んだ弱弱しい風は、数年後。
 俺たち、九艘と一謡を揺るがす風になっていた。

【水の旋律:拓哉×陽菜】
 暗いものばっかりですみません…。

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075.Marry me?

「将来はお兄ちゃんのお嫁さんになるの」
 小さい頃に、何かの雑誌の取材を受けたときのヒトミの言葉。
 俺は本当に嬉しくて、周りが笑っている理由も分からなかった。
 でも、大人に近づくに連れて、絶対無理だと分からされる。
 どんなに好きでも、絶対に無理だと。


「・・・・・・・・結婚してくれるか?」
 隣で眠るヒトミに、そっと問いかける。
 答えが返ってこないのは分かっているし、できないのも分かっている。
 でも、それでも。
 形はこの先も兄妹でしかないけれど、お前も俺を好きでいてくれるって思ってもいいんだよな?

【乙女的恋革命ラブレボ!!:鷹士×ヒトミ】
 一生二人で生きればいいじゃない!

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076.探しもの

「ね、芹香」
「うん?」
 玲司がギリギリまで顔を近づけて、思いっきり笑顔で名前を呼ぶ。
「オレ、明日からまたしばらくいなくなるけど、寂しくない?」
「はあ・・・・」
「む。なにそのため息?」
 ため息を非難されようとも、芹香にとっては当然の反応でしょうと思うのみだ。
 いなくなると言っても同じフランス国内であるし、4日間撮影に行くだけだ。
 日本と海外の遠距離に、数ヶ月間会えなかった昔とは違う。
 このくらいで寂しいなどと言っていたら、玲司の彼女などやっていられるものではない。
「って言うかね、その質問、今日だけで軽く片手は越えてるのよ?」
「えー、だって寂しいって言ってくれないじゃん」
「これで私が『寂しい!置いていかないでっ』って言って仕事断れる?」
「芹香がそう言うなら辞めるよ?」
「行ってらっしゃい」
「ちょ、芹香!」
「それに!」
 ビシッと玲司に人差し指を突きつける。
「5年前と違って連絡取れるもの。仕事に行ってるって分かってれば、それだけで私は安心できるの」
「そ、そう?」
「玲司が浮気なんて考えてないし、束縛する気はないけど、玲司が仕事行ってれば探さなくて済むでしょう?」
「なに、そんなにオレの行動気になる!?」
 嬉しそうに抱きつこうとする玲司を無理矢理引き剥がす芹香。
 傍から見ると、大型犬に構われて迷惑している飼い主だ。
「5年前みたいに海にまで探しに行きたくないって意味よ!少しは私を安心させて」
「あ、そんなこともあったね」
 それから、やっぱり無邪気な何も考えてない笑顔で言う。
「オレがまた同じことやっても探しに来てくれるってことだよね、それって」
 反省してない。
 脱力しながらも、探すに決まってるでしょと思う芹香は、この大型犬に甘すぎるのかもしれない。

【ラスト・エスコート2:玲司×芹香】
 大型犬でした、玲司は。見た目そのまま。

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077.ひゃくまんつぶの涙

 今まで彼女はいくつの涙を流しただろう。
 コンクールの期間中、僕は傍にいられなかったけれど、初めてのことばかりで戸惑ったんだと思う。
 土浦や月森から聞く彼女はいつも凛としていたけれど、それだけが彼女じゃないことを僕たちは知ってる。
 ねえ、香穂さん。
 春に僕は君の傍にいられなかった。
 でも、今は僕が傍にいるよ。
 今まで辛さと苦しみで泣いてきた分、今度は幸せな涙を流せればいいって思う。
 いつだって僕が君を笑わせて、幸せな涙しか零れないようにしてあげるから。

【金色のコルダ2:加地×香穂子】
 傍にいられなかったことをずっと悔しがる加地だといいなって思う。

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078.サイン

「これで、一緒にいられるんですね」
「そうですね」
 婚姻届に芹香がサインしたのを見て、信行がゆったりと微笑む。
 これで芹香の一生を本当に縛れるとは思っていないが、今まで以上に別れるのが難しくなるのは確実だと思う。
 束縛したいわけではないし、絶対に別れないと脅したいわけではないが、別れたいなどとは冗談でも思わない。
「今日、役所に婚姻届を出す予定だと直夜に連絡したら、遅かったなって言われたくらいですけど」
「竜崎さんですか?懐かしいですね。まだみんな一応働いているんですよね」
「一応ね。それぞれずっとやってる訳には行かないでしょうけど。もう少しは続けるのかな」
 玲司はまだ響さんとの話がついていない。
 解決には程遠いが、ずっと避けて通れる話でもない。どうするのか見守るのみだ。
 他のホストたちも、まだ先の話ではあるが辞めるだろう。
 この先ずっと続けられるものではないのだから。
「私も、ホスト辞めたらどうするか、考えなくてはいけないですね」
「・・・えっと、結婚してからも続けるホストはいないってことですか」
「そうですよ。既婚者・・・はね。もっとも、事実かどうかは置いておいて、前の店長の水無月さんは恐妻家って噂がありましたけど」
「ええっ」
「結婚してなかったですから、恐妻家も何もあったものじゃなかったですけど。あの頃のホストたちが面白半分で言っていたらしいです」
「それは・・・水無月さんでしたっけ。その方も大変だったんでしょうね」
「かもしれませんねえ、よく分からないですが。今は結婚もして、ホストも辞めましたけど」
「へえ、お客さんと?」
「お客様・・・と言うよりも、オーナーの娘さんだったかな」
 名前や顔は覚えていないが、関係に随分驚いた覚えがある。わざわざオーナーの娘を選ばなくても良さそうなものなのに。
「と言うことで、水無月さんの次は私です。後のことは追々考えるとして――」
「考えるとして?」
「今は、目の前の結婚のことだけ考えていたいかな」
 芹香らしい丁寧なサインを見て、本当に結婚できるんだと笑みが漏れた。

【ラスト・エスコート2:天祢×芹香】
 嬉々として(?)水無月の噂を教えてくれましたよね、ホストたち。

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079.それじゃ、バイバイ
 元気でな。すぐに戻ってきていいんだぞ。辛くなったら電話しろよ。
 掛ける言葉はいくらでもあったのに、どうしても喉に痞えて言葉にならない。
 一之瀬との婚約が決まったのは半年前。
 一之瀬の会社の都合で、結婚してからはイギリスでの生活になるらしい。
 秘書はヒトミ以外にもいるだろうと食って掛かったら、恋人はヒトミだけですと返された。


「本当に行っちゃうんだな、ヒトミ・・・・」
「お兄ちゃん、そんなに泣かないで、ね?私は大丈夫だから」
「鷹士さん、ヒトミのことは俺に任せてください」
「ヒトミのことをヒトミなんて呼び捨てるなああああああっ!」
「難しい人だな・・・・・」
「何か言ったか!?」
「いえ、何も。妹さんのことは大事にします。ほら、行くぞ」
「あ、はい!」

 いつかはこんな日が来るとは分かっていたけれど。
「それじゃ、バイバイ」
 明るく去って行くヒトミに、膝から崩れそうになるのを必死に堪えていた。

【乙女的恋革命ラブレボ!!:一之瀬×ヒトミ←鷹士】
 ギャグっぽくしようとして玉砕。

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080.クラシック

「これ、約束してたCDだよ」
「うわ、ありがとうございます!」
 学校が夏休みに入ってすぐにウィーンに来た香穂ちゃん。
 音楽科への転入に続いて、もう半年もせずに大学の音楽部への入学試験が待っている。
 そんな中来てくれたのが、本当に申し訳ないけれど、嬉しくもあった。
「・・・あれ、これってクラシック・・・じゃない?」
「うん。俺がこっちに来て最初の録音は、クラシックと現代曲合わせたCDにしたかったんだよね」
「現代曲好きでしたっけ?」
「いい曲多いよ。クラシックの方が一般受けしない曲もある割に有名曲揃いだから、確実なんだけど」
 それでも、どうしても現代曲が弾いてみたかった。
「香穂ちゃんに聴いてみてほしい曲ばかり揃えたんだ」
「私ですか?」
「そう。香穂ちゃんっていきなりヴァイオリン持って、ずっとクラシックばかりだったじゃない?現代オリジナルなんてあんまり聞かないんだろうなって。聴いてみて、耳に馴染みやすい、軽やかな曲で揃えてみたから」
 世界に音楽は満ちている。
 それは「クラシック」って括りだけじゃない、香穂ちゃんが目を向けるべき世界はどこまでも広がってるんだよ。
 それを一番に教えてあげられるのが、俺だったらいいな。
 そう思っての最初のCDだったんだ。

【金色のコルダ2アンコール:王崎×香穂子】
 タイトルと違いすぎ(笑)

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081.ほどけた髪

「羽倉、ホントどこ行っちゃったんだろ」
「どこにも浮いてはいないしね」
 それはそうだろう、と心の中で呟く。
 羽倉もそれなりには心配だが、それ以上にあいつのことだ。
 今晩、誰と夜を過ごすのか。
 馬鹿なあいつのことだ、2・3に別れ、鈴原と誰かもう一人と当然のように言えば、それで納得すると思っていた。
 実際、1・4でどうだなどと言われたが、そんな死にたくなるような部屋割りはやめてくれ。
 万が一にもありえないとは思ったが、鈴原と男二人の3人で寝たいなどと言われなくて安心はした。
「・・っ」
「一宮?」
「あー、何でもないよ。これ・・・女物の髪留めかな。踏んじゃったみたい」
「ああ、ここは9時前は女風呂だからな」
 混浴の時間も作れよと愚痴りたい気持ちは、必死に抑えておく。
「むぎちゃんも、こんなやつで髪留めてお風呂入るのかな」
「はあ?」
「気にならない?いつも思ってたけど、彼女色白くて、肌理も細かいよね」
「瀬伊、彼女の前でそれを言ったらセクハラ扱いだから注意するようにね。あと、彼女をいつもそんな目で見ていたのかい?」
 いい趣味じゃないと、非難する視線の松川さんを睨みつける一宮。
「何?松川さんも同じようなものでしょ?あ、一番のセクハラ魔は一哉だけど」
「俺かよ?俺は関係ないだろ」
「あるよ。一番、むぎちゃんをいやらしい目で見てるもんね」
「見てないだろ」
「えー、そうかなあ」
 ・・・・・・・・・・・・見てねえよ。

【フルハウスキス2恋愛迷宮:麻生×むぎ←ラ・プリ】
 麻生ルートだと髪解けてたので。

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082.月明かり

 月が――――

「弁慶。どうしたんだ?」
 ふと縁の軋む音がして、振り向くよりも先に声がかかった。
 心配そうに眉を顰めた九郎だった。
「・・・いえ。今夜は月が綺麗ですから。懐かしいものですね、平泉の夜は」
 もう何度、この月を見上げたのだろうか。
 そして、見上げては思い出すのだ。
 見たこともない土地で懸命に息をし、ただ鈴のように笑い、只管に前を向いていた少女を。
「・・・・・・・・だから、お前は大馬鹿だと言うのだ」
 血を吐きそうな、苦しげな九郎の言葉。
 感情だけで、彼女をこの危険な土地に縛っていいはずはないと思うのは、僕の自己満足に過ぎないのでしょうか。
 彼女は神子として精一杯のことをしてくれた。
 なのに、八葉の僕たちは彼女に何を返せたでしょうか。
 彼女の存在意義と僕たちの目的が同一だったから同行しただけで、違っていたら彼女が一緒に旅をすることはきっと有り得なかった。
「・・・馬鹿でも何でも構いません。彼女が平和に生きられる未来を掴み取ってくれることこそが、何よりも大事だと思いますから」
 最後まで戻らないと叫んだ彼女を脅した時。
 彼女の悲痛な表情が忘れられない。

「おや―――月が、曇ってしまいましたね」
 月に厚い雲がかかって、淡い月の光さえも見えなくなった。

【遙かなる時空の中で3十六夜記:弁慶×望美】
 BADにトラウマある方がいたら、申し訳なかったですorz

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083.鼓動が限界

「・・・こ、怖かった・・・」
 ヴァイオリンを抱えて、思わずしゃがみこんでしまう。
 もう4回目の舞台で、難曲ラ・カンパネッラも完璧だった。
 それなのに、ここまで足の震えが止まらなくて、立ってもいられない。
 全部終わった。後悔するような演奏もない。これはあれ?脱力感?
「・・・・・そこにいるの、日野、だよな」
「え、・・・って、青山先輩?」
「火原が日野のこと探してたんだけど・・・お前、こんな舞台袖で座り込んで、大丈夫か?」
 ヴァイオリンを抱え込んで、ドレスのまま座り込んでる子がいたら、それは驚くだろう。
「あーもー、日野、無理しすぎたんじゃね?終わったから、緊張の糸切れたんだろ」
 ぽん。
「はい?」
「ダメ?妹が、頭撫でてやると安心するっつってた」
 ・・・・・・いや、あの。
「安心、はするんで、すけど」
 足の震えとか、妙な脱力感とか・・・そんなものがなくなった代わりに。
 心臓とか、ちょっとやばいかもしれないんですけど。

【金色のコルダ:青山×香穂子】
 絶対青山か長柄のSSSを書きたかったので満足です。

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084.傷痕

 彼女――むぎが一哉の家に来たきっかけ。
 彼女の姉が失踪して、続いてご両親が「自殺」で亡くなられた。
 俺の心を癒してくれたのは、突拍子もないことも言うけれど、雲ひとつない夏の晴れた空のような彼女の存在だった。
 彼女と俺の苦しみを比べることはできないけれど、本来ならあそこまで追い詰められた状況になど、なるはずがない。
 その状況に遭った彼女は、どれだけの夜を心細く過ごしただろう。
 一哉の家に来てからだって、一人で膝を抱えたこともあったかもしれない。

 もう、そんなことはさせないから。
 絶対に。

【フルハウスキス2:依織×むぎ】
 付き合い始めた直後くらいかなあ。

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085.The day after

 芸能界入りを蹴って、芹香との結婚のためイベント関連の会社に就職してもうそろそろ5年。
 知り合いの伝で入っただけの会社の割には、結構俺には合ってたんじゃないかと思う。
 ホストは9年もやっていたが、結婚した上でそれが続けられる訳もなし、これでよかったんだと思おう自分は確実にいる。
 普通の会社に就職してなかったら、芹香との結婚は難しかったわけだし。
 芹香とホスト。天秤に掛けたら・・・やっぱり芹香の比重が重かった。ずっと続けられる仕事でもなかったんだ、ホストは。

『竜崎さんの頃が一番輝いていたって思うの』
『もう1回やり直してみない?』
『あ、でも浮気はダメだからね』

 ホストを辞めた5年前からあの日からずっと、自分を偽ってきたのかもしれない。
 芹香とホストなら芹香の方が大事だし、結婚したことを後悔したことなんて一度だってなかった。
 それでも、俺は選べるなら。
―――ホストも芹香も掴み取りたかったんだ。

【ラスト・エスコート2:竜崎×芹香】
 趣味がよすぎる竜崎が大好きだ。

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086.ドレスアップ

「陽菜、似合ってるよ」
 試着室から出てきた陽菜に笑顔で声を掛ける。
 戸惑ったように自分自身を鏡に映しながら、「そうですか・・・?」と不安げだ。
「うん、そりゃもうね。なんでそんなに不安そうかなあ」
「だ、だって今日は柏木さんと涼さんに会うんですよ!?」
「だからどうしたの。涼なんて飽きるほど見たことあるでしょ」
 一謡の郷に住んでいれば、あの兄弟や片瀬辺りは見ていてイラッとするほど会うことになる。
「・・・・柏木さん可愛いから、どうしたって比べちゃって」
「柏木と?」
「はい・・・」
 自分で言っていて落ち込んだらしい。
 一謡の貴重なハンターを思い出してみる。今は涼との結婚目前で、高校卒業も間近な少女だ。
「可愛い・・・・・って言えば可愛いのかもしれないけど」
「可愛いですよっ」
 言っていて自棄になっているように聴こえるんだけど・・・。
「でも、陽菜は可愛いって言うよりも『美人』って形容されるタイプだと思うしなあ」
「はい?」
「今日のそれだって、柏木じゃ似合わない大人っぽいものにしたわけだし。二人を同じ土俵で比べたら変だよ」
 陽菜と柏木を可愛いかどうかで比べたら確かに柏木だろう。
 だからと言って、「綺麗」かどうかで比べたらきっと陽菜の方が上だし。
「比べる必要ない。ね?比べて落ち込むなんて陽菜らしくないよ」
 ようやく陽菜が少し笑ってくれた。

【水の旋律:愁一×陽菜】
 陽菜だってきらを意識してたらいいよ。

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087.儚い季節

「桜の季節ですね、もう」
 3月も下旬。満開の桜・・・までは行かずとも、随分と咲き揃ってきた。
「きらは桜は好きですか?」
「うーん、綺麗だなって思うけど、好きとかって考えたことないかも」
「そうなのですか。・・・ああ、でも、綺麗だとは思っても好きだと思ったことはないかもしれないですね」
 自分の世界の全てだと言った庭に咲く桜の木を見上げながら、水季が小さく笑った。
「じゃあ、水季さんの好きな花って何ですか?」
「好きな花ですか・・・・・そうですね・・・」
 花、花・・・と小さく呟いているが、これと言ってないらしい。
「・・・って言うか、水季さんが好きなのってなんですか?」
「きらですが?」
「ちょ、それは聞いてないですから!」
「ふふ、そうですねえ。今まではいついなくなるとも分からなかったですからね。好きなものは作らないようにしていたかもしれません」
「・・・・」
「今はきらがいますから、たとえいつこの世から存在が消えるとしても、何かを好きになってみるのもいいかもしれないと思いました」
 あ、でも、と悪戯っぽくきらに笑いかける。
「何を好きになっても、一番はきらですよ」
「!」

【水の旋律2〜緋の記憶〜:水季×きら】
 素で甘いのは年長者の樹・水季・涼だと思う。

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088.他愛のない喧嘩

 暑い夏も過ぎて、少しは暑さが落ち着くはずの秋半ば。
「早く歩け」
「早く歩け、じゃないですよ。早く戻ってください!」
「なぜ。俺は家に戻りたい。お前も疲れただろ」
 珠洲を思いやるような言葉が出てくるなんて、転校してきた当初、誰が思っただろう。
「つ、疲れましたけど!でも、戻っちゃうのは良くないと思うんですよ」
「体育祭なんて面倒くさい。リレーでアンカー任されても迷惑だ」
「アンカーなんてなりたくてもなれるものじゃないですよっ。クラスの先輩方も・・・」
「うるさい、どうせクラスの女どもが勝手に決めただけだ」
「そんな。・・・・・・・私も先輩の走ってるところ、見たかったのに・・・・」
「っ・・・」
「・・・・・・そりゃ、先輩がキャーキャー言われるのは微妙な気分だけど、私も応援したかったのに」
「・・・・・戻るぞ」
「ホントですか!戻りましょう!まだ間に合いますよっ」
 珠洲の手を取って早足で戻っていく克彦。頬が微妙に紅いのは気のせいか。
「なー陸」
「はい」
「・・・・・壬生先輩ってあんなキャラか?」
「さあ・・・・・?」
 力尽くでも連れ戻せと先輩に命令された二人は脱力するだけだった。

【翡翠の雫:克彦×珠洲+晶・陸】
 人間って変われるものだよ。

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089.触れた指先

 最近、むぎの様子がどう考えてもおかしい。
「むぎ、おは――」
「あっ、お、おはよっ」
「・・・?おはよう」
 あの意味の分からないゴタゴタの後から、むぎはよく泊まりに来るようになったし、俺もできるだけむぎとの時間を作るようにしてきた。
 今まで以上に大事にしよう、していかなければと思ったから(あんな誤解はもう嫌だ)。
「そう言えば、あのー・・・お母さんから電話、あったよ」
「真弓さんから?いつ」
「・・・・・・2・3日前」
「それを今言うのかよ」
 あの人からの電話に慌てる内容のものがあるとは思えない。
 そんなに躊躇うほどの内容って何だ、そう思いながら小さく笑う。ホントにこいつって面白いことする。
「・・・・・・・・近いうちに遊びに来なさいだって」
「へえ。いつが空いてるかな。俺、当分仕事が――」
「3人で」
「詰まってる・・・・・・・・・・・・・・・・・3人?依織?」
「・・・・・・・・・・・依織くんはノーカウントです」
「あと・・・・・誰」
「・・・あ、赤ちゃん・・・?」
 言われた瞬間に、思わず咽た。
「何考えてるんだ、あの人は・・・!」
 むぎに変な電話寄越すのは止めてくれ。
 今までは、ただでさえ厳しい梨園で仲良くやっていってくれるなら何でも構わないと思ってきたけど。
「ちょ、皇くん!」
 抗議の電話を掛けようとした手が止められる。頼むから止めるな。
「・・・・・・あたしは、欲しいって思ったよ?」
「むぎ・・・・・・・?」
「早いかもしれないけど、あたしは、思った。皇くんの子供欲しいなって」
 真剣な瞳を向けられて、ひしっと手を握られて。
 受話器を置いて、上目遣いで見上げてくるむぎにため息をついた。

「――――頼むから、朝から仕事に行けなくなるようなこと言わないでくれ」

 ・・・・・ただでさえ今日は依織と一緒の仕事なのに。
 子供云々で仕事休みだなんて、今度こそ依織に殺されると思うんだ。

【フルハウスキス2恋愛迷宮:皇×むぎ】
 本当に殺しそうな勢いで嫉妬してた松川兄。

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090.目を閉じておいでよ

 何も知らなくていい。
 全部に目を瞑って、ただ今までのように過ごしたいと願っていればいいんだ。
「ごめん・・・」
 ただただ謝るしかできないのけど。
 もう、お前に辛い思いはさせたくないから。
 だから、全部忘れて、見なかったことにしてくれないか――?

【水の旋律:拓哉×陽菜】
 BADルートくらいの勢いかもしれません。

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091.壊れた約束

「――陽菜」
 遠い約束で縛った相手の名を呼びながら、どこまでも青い空を見上げた。
 陽菜に何かあったら俺が守る。
 その思いだけで、陽菜の傍にずっと居た。
 いつからだったのかもう分からない。
 罪の意識でも、約束でもなく、陽菜の傍にいようと思ったのは。
――当たり前って言えば当たり前なのにな・・・
 自嘲しながら思う。俺が傍にいようとしたとしても、陽菜が俺を選ばなかったら意味がない。
 あいつが選んだのは手塚で、人間で、―――陽菜も今はまた人間で。
 幼いけれど、心の底から願った一つの約束。
 俺が人間だったら、ずっと陽菜のそばに居られたのか。
 陽菜は俺と生きてくれたのか。
 俺を選んでくれたのか。
「・・・、人間として・・・会いたかったんだ」
 陽菜はこの言葉をどう受け止めただろう。
 陽菜を目の前に言った言葉を反芻して、考える。
 この10数年は陽菜のためにあった。
 これから先の数百年は―――陽菜の幸せだけを考える時間になるのかもしれない。
 あの約束はもう叶わないけれど、俺はずっと想ってる。

「今日もよく晴れてんなあ」
 泣きたくなるくらい、あいつは幸せに笑ってるんだろう。

【水の旋律:手塚×陽菜←拓哉】
 拓哉の台詞にガチ泣きしそうになりました。
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092.ジューンブライド

「結婚式はいつにしようか?」
 付き合ってもうすぐ5年になろうとしている春。
 プロポーズを受けてくれて、ご両親にも挨拶に伺って。
「うーん。7月とか8月、かな。夏好きだし」
「え、好きなの?」
「うん。別に冬が嫌いって訳じゃないし、結婚式だって別に気にしないんだけど・・・」
 どちらかと言うとお互いの誕生日が冬なのだから、12月か2月がよかったらしいが、プロポーズからあまり時間が経ってしまうのも気が退ける、と言うことだった。
「なら、6月なんてどうですか?」
「6月・・・・ジューンブライド?」
「そう。どうですか?」

 12月なんて待っていられない。彼女の仕事を考えたら無理だ。
 じゃあ2月?
 何のためにこの時期に結婚話を進めていると?

「やっぱり、純白のドレスは6月に見たいかなって思うんだ」

【ラスト・エスコート2:天祢×芹香】
 でも、結婚式の準備って半年は掛かるよね…?

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093.ホームワークが終わらない

 夕食の用意は買ってきたし、頼まれてた雑誌も買ったし。
「ただい・・・」
「だーっ、お前はあ!」
「ごめんなさいーっ」
 家の奥から聞こえてくる大声にビクッとしつつ声のする姉さんの部屋を覗く。
 机に突っ伏すように頭を抱える姉さんと、机に両手を突いて、馬鹿に付き合うのはもう疲れたと言わんばかりに盛大にため息をついている晶さんだった。
「姉さん、どうしたんだ?」
「陸ー・・・」
 涙目になっている。
「こら、陸に助けを求めるな。ほら、早く」
「分かんないんだってば・・・」
「分かるって。まずここで1回微分するんだよ。微分は分かるだろ?」
「・・・・陸ー」
「陸ーじゃない」
 ポカッと頭を叩いている。晶さんじゃなかったら、相手が誰でも止めに入っていた。
 でも、晶さんだから。たとえ冗談でも、絶対に姉さんを傷つけない人だ。
「宿題、か?」
「ああそうだよ。さっきからこいつ、何度教えても分かんないしか言わない。お前、馬鹿だろ?」
 傷つけない人・・・・・・・・・だとは信じているんですが、晶さん。
 姉さんが本気で涙目なんですけど・・・・?

【翡翠の雫:晶×珠洲+陸】
 何だかんだで、ずっと面倒見ちゃう晶。

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094.気まぐれな熱情

 パッと見でそれなりに可愛かった。
 入店した時から、何だかんだ言い合ったこともあったけど指名してもらってたし。
 何よりも、指名していたからって俺のファンじゃなかった。
 別に俺なんかどうでもいいって思ってるくらいの女の子だったし。
 だから、永久指名もあんなに気軽に頼めたんだ。
 ファンになら裏切りだと喚かれることも、明里なら平気だと思っていたし。

 それが・・・・・・・・。
 実際に真実がばれたら、予想以上に悲しい顔だけをされて駆けて行かれた。
 追いかけるつもりもなかったのに、一瞬だけ追いかけそうになってしまった。
 そして、今。
 見違える――って言ったら失礼か?
 でも、本当にそれくらい変わった彼女が目の前にいる。
 ただの仕事だったはずなのに――・・・
 なんで、彼女を振った俺が振られた気分にさせられんだ・・・?

【ラスト・エスコート:炎樹×明里】
 あんまり怒りが沸かなかったルート。

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095.癖

「そうかな?」
 先輩の癖って、もう笑顔そのものじゃないんですか?
 いきなりそんなことを言われて驚いたけれど、そうなのかな。
「さすがに笑顔が癖だって言われたことはないんだけど」
「でも、常に笑顔ですよね」
 ヒトミちゃんこそ笑顔が癖みたいに、ずっと笑ってる。
 僕が前向きでいられなくなりそうな時も、その笑顔で支えてくれたね。
 両親が諦めたように泣いた時、諦めないって言って笑顔で二人に笑いかけてたのも知ってるよ。
 もし僕の笑顔が癖なんだとしたら、笑顔でいれば君が辛そうな顔をしなくて済むからだと思う。
「私、先輩の笑った顔大好きなんです」
 僕もそう。君の笑顔が大好きで、心の支えだよ。
「でも、・・・・・無理に笑わなくていいんですよ?」

 え―――・・・・・?

【乙女的恋革命ラブレボ!!:神城×ヒトミ】
 無理に笑ってる部分、確実にあったよね。

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096.not awaken

「これを・・・あ、申し訳ない。大丈夫ですか?」
 整理を頼もうとしていた書類が、座った彼女の肩に当たってしまった。
 軽くではあったが重い書類だった。
「大丈夫ですよ。ええと、これですか?」
「はい。先ほど頼んだものよりも先にこちらをお願いできますか」
「分かりました。すぐに終わらせますね!」
 笑顔で張り切る彼女に、こちらまで笑みが浮かんでくる。
 本当に23歳とは思えないほどだ。
「今日の仕事が終わったら、また食事でもどうでしょう」
「いいんですか?・・・よっし、がんばるぞー!」
「ふふ、私も楽しみにしています」

 あの時はまだ彼女をこんなにも愛しいと思うなんて思っていなかった。
 そして、彼女がこうして隣にいてくれるようになるとも。
 2年間。長い別れのあとの再会。
 出会った当初の関係――お互い上司と部下とだけ思っていた関係に戻れれば彼女を傷つけないだろうにと何度思ったか。
 でも、後悔だけの過去だとしても、こんなにも幸せな未来を手にできた。
「・・・それだけで、生きていてよかったと思うのですよ」
「はい?」
 何でもありません、そう言って額にキスを一つだけ落として、そっと笑う。
 まだまだ子供のような彼女との未来が、これからも続いていくように。

【フルハウスキス2恋愛迷宮:東條×むぎ】
 迷宮あってこその葵むぎだと思った。

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097.このまま夜明けまで

「今日の会食はどうでしたか?」
 後はもう寝るだけ、と言う体のきらを縁側に誘って月夜を見上げる。
 雲のかかっていない月を二人で眺めていた中での唐突な問いに、少し驚いたようだった。
「愁一さんと白石先輩とのですか?白石先輩、やっぱり大人っぽくて凄く綺麗だったなあって」
「そうだったんですか」
「だったんですか・・・って、涼さん、先輩のこと見てなかったんですか?」
「あまり女性を見るのも失礼ですし・・・当主へ結婚の正式な報告さえできればそれでよかったですから」
「まあ・・・それはそうなんですけど」
 少し呆れたような、そんな表情で見返される。
「なにより、きらを見ていることの方が楽しいですし」
「何言い出すんですかっ」
「食事も美味しかったですよね」
「そうでしたよね!普段私が作ると絶対無理だし」
 しゅんとしてしまったきら。いつもの食事での失敗が駆け巡っているのだろう。
 あれはあれで珍しいことを考えるものだと楽しんでいるのだが、きらは至って真剣らしい。
「でも、あれは無理だけど、絶対もっと上手くなるように頑張るから!」
「そうですね。私もきらと料理しているのは楽しいですから、一緒に頑張って行きましょう」
 それからずっと明け方まで。
 結婚したらどんなことをしてみたい、道場をどうして行きたいか。
 飽きることもなく話し続けた。

【水の旋律2〜緋の欠片〜:涼×きら】
 86の続き的な感じで書いてみました。

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098.ミステイク

「白石先輩、何買うの?」
 ちょこんと陽菜の手元を覗き込むきら。
 今日は二人で、目前に迫ったヴァレンタインのチョコレートを買いに来ていた。
「うん、一応決まったかな。柏木さんは?安曇くんにだよね?」
「えへへ、一応。安曇先輩、喜んでくれるといいんだけど。先輩は桐原先生ですよね」
「うん、気を遣わないでくれって前に言われたんだけどね。それはそうと、安曇君なら柏木さんからの物なら、何でも喜びそう」
 尚和高校は卒業したというのに、ほぼ毎日のように部活の迎えに行っているらしい律儀な友人を思い出しながら言う。
「そ、そっかな。あ。ね、先輩。何かオススメってある?」
「オススメかあ。・・・・・・・・海老トリュフ、とか」
「え、え?海老、トリュフ?・・・・・・・美味しいのかな」
「一昨年あげたら貴人さんは気に入ってくれたみたいだったけど」
「・・・・・・・・・そっか。うん、じゃあ、私もそれにする!」
 ボイル海老の恐怖が、一昨年に続いて今年もまた、九艘の郷を襲うことになりそうだった。

【水の旋律2+協奏曲:貴人×陽菜+康秀×きら】
 ある意味ベストチョイスなボイル海老。

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099.ただ、君を待つ

 ホワイトデー。
 お返しだよ、とプレゼントを渡すと、途端に「可愛い!」と笑顔になる彼女だ。
 渡したプレゼントは本当に子供へのプレゼントのような、ひよこのぬいぐるみだった。
 自分の持っていると大きさだけが違う、瓜二つの物だったから。
 それに笑顔で喜んでくれる、素直で優しい君が本当に大好きだよ。
 君から奪った九艘と言う運命を、君は自分で決めたことだと言ってくれた。
 それで本当に僕の後悔がなくなったわけではないけれど、改めて君を幸せにしなくちゃいけないなって思えたんだ。
 ねえ、あと数年。
 それだけ待ったら、いつも君の傍にいて、君だけを愛していくから――。
「早く僕に追いついておいで」

【水の旋律〜協奏曲〜:手塚×陽菜】
 手塚の優しい声音での追いついておいでに、塚陽いいなと改めて思った。

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100.タイムリミット

 いつかは戻るって分かってた。
 いつまでもこっちにいられる人じゃないから。
 でも、でも―――離れるなんて、考えられない人だよ。
 普通の遠距離恋愛なら耐えてみせる。
 だけど、私たちは違う。離れたらもう絶対に会えない。
「お前のことは、一生忘れない。・・・離れても、俺の想いは変わらない」
 数日前の夜、一人の女性として好きだと言ってくれた人は、そう言って今までになく穏やかに笑った。
 出会った頃には想像もできなかったくらいに。
「時間だ。俺は向こうへ戻ってやらなくてはいけないことが山のようにある」
 改めて言われるまでもなく、そんなこと分かりきってた。
「・・・・・・・忘れない」
 そう言って躊躇いも見せずに踵を返した。
 寂しさなんて、欠片もないと言うように。
「・・・・・・っ、バカ!」
「なっ」
 叫んだ瞬間、追っていた。追って、背中にしがみ付いていた。
 九郎さんが振り向く余裕もないくらいに。
「・・・・・・行くから、一緒にいるって決めたから・・・!」
 ずーっとずっと、向こうにいて九郎さんを好きになるほどに考えていた。
 私たちが一緒にいるための方法。
 問題を先延ばしにしていたけど、もう決めた。誰になんて言われようと、一緒に行く。
「・・・・・・それでは望美のご両親が悲しむだろう」
「決めたの、ずっと一緒だって。お父さんもお母さんも、きっと分かってくれる」
 勝手な子供の言い分だってことは分かってる。
 だからって、諦められる想いでもない。だって、命まで賭けた私たちの思い出だよ?恋だよ?
「―――もう、決めたから」
 繰り返す私に、九郎さんのため息が触れた。
「・・・・・・・・ありがとう」
 ごめん。お父さん、お母さん、将臣くん、譲くん、ごめん。
 でも、九郎さんの隣だけが私のいるべき場所なんだって思うんだ――・・・

【遙かなる時空の中で3運命の迷宮:九郎×望美】
 やりすぎた?

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乙女ゲーばかりで揃えてみました。
キャラとゲームタイトルが偏りすぎたかも・・・?
◇ カップリング創作好きに100のお題
   〜カップリング創作好きに100のお題〜
掲載:  08/05/11