×
約束
 約束。
 絶対帰ってくるから。
 お前を一人にはしないから。


 自分を重ねた桜から遠く離れた空の下で、いつも想ってる。
 ちゃんと覚えているんだよ。
 俺が今、ここにいる理由はお前なんだってこと。
 お前がいなかったら、俺はきっと生きるってことすら諦めてた。
 治らないなら意味がない、なんてことを考えながら。
 でも、そうじゃない。
 完治しないなら意味がないんじゃない。
 俺にとって意味があるのは、史桜――お前の傍にいるって約束できることなんだろうと思う。
 今よりも少しでも長く一緒にいられるって約束できることに、何よりも意味がある。
 あの島に戻って、史桜に出会わなかったら俺が生きる意味には気づかないまま、いなくなっていたかもしれない。


 今日は、空が青く澄んでるよ。
 島はどう?
 天気予報ではそっちも晴れだって言ってたけど、あの予報、結構外れるんだよね。


 だから――電話、掛けておいで。
 史桜に手紙もメールも出せないし、電話もかけられない。
 ほら、あれ。
 何かお願いする時は、一番に想うものを断つって言うだろ。願掛けって言うの?それ。
 ただね、自分でも甘いなって思うけど、史桜からの電話になら出ていいんじゃないの?って、自分を許しちゃってるんだよね。
 史桜の声が聞けるなら何だっていい。
 天気の話でも学校の話でも。
 ああでも、兄貴や双子の話はナシね。
 「彼氏」の俺が史桜の傍にいられないのに、あいつらだけ一緒なんてずるいだろ?
 他の話ならなんだって聞くから。


 で、最後に約束しよう。
 絶対。絶対に、春には一緒に桜を見よう、って。
 初めてちゃんと話したのは桜並木の下だったよね。
 また同じ場所で、今度はもっと恋人らしい話をしよっか。


 もう史桜との約束は破らないからね。


 覚えているんだよ。
 一緒に桜を見ようって約束。
 それに、名前に桜を持った子も好きだよってこと。
 いや、―――心から愛してるってことも。





こっちも拍手を収納。
蒼のモノローグはいつも離れてる時のになってしまう。
月の咲く空 これからの二人に30のお題
掲載: 08/10/22