約束。
絶対帰ってくるから。
お前を一人にはしないから。
自分を重ねた桜から遠く離れた空の下で、いつも想ってる。
ちゃんと覚えているんだよ。
俺が今、ここにいる理由はお前なんだってこと。
お前がいなかったら、俺はきっと生きるってことすら諦めてた。
治らないなら意味がない、なんてことを考えながら。
でも、そうじゃない。
完治しないなら意味がないんじゃない。
俺にとって意味があるのは、史桜――お前の傍にいるって約束できることなんだろうと思う。
今よりも少しでも長く一緒にいられるって約束できることに、何よりも意味がある。
あの島に戻って、史桜に出会わなかったら俺が生きる意味には気づかないまま、いなくなっていたかもしれない。
今日は、空が青く澄んでるよ。
島はどう?
天気予報ではそっちも晴れだって言ってたけど、あの予報、結構外れるんだよね。
だから――電話、掛けておいで。
史桜に手紙もメールも出せないし、電話もかけられない。
ほら、あれ。
何かお願いする時は、一番に想うものを断つって言うだろ。願掛けって言うの?それ。
ただね、自分でも甘いなって思うけど、史桜からの電話になら出ていいんじゃないの?って、自分を許しちゃってるんだよね。
史桜の声が聞けるなら何だっていい。
天気の話でも学校の話でも。
ああでも、兄貴や双子の話はナシね。
「彼氏」の俺が史桜の傍にいられないのに、あいつらだけ一緒なんてずるいだろ?
他の話ならなんだって聞くから。
で、最後に約束しよう。
絶対。絶対に、春には一緒に桜を見よう、って。
初めてちゃんと話したのは桜並木の下だったよね。
また同じ場所で、今度はもっと恋人らしい話をしよっか。
もう史桜との約束は破らないからね。
覚えているんだよ。
一緒に桜を見ようって約束。
それに、名前に桜を持った子も好きだよってこと。
いや、―――心から愛してるってことも。