桜の舞う通学路。
見上げた桜は毎年のように、綺麗に咲き揃って、薄紅色の花びらを散らせている。
去年も同じようにこの桜を見上げたのに。
「おや、今日は早かったじゃないか。そんなに俺に会うのが楽しみだった?」
「もう、違います!たまたま早く起きただけです!」
「可愛くないな。そこは、素直に会いたかったって言っておくものだよ」
「実際、私がそう言ったら気味悪そうにするくせに…」
「よくわかってるね。…今日は少し早い。学院に送る前に、公園に寄って行こうか。誰にも邪魔されずに花見ができるよ」
今年は、こうして唐突に甘やかしてくれる恋人ができた。
「先輩」
「? どうかしたのか」
言いながらも、早く乗れと車のドアを開けて催促している。
「…。いーえ、なんでもないです」
「なんなんだ。…まったく、お前と話すと疲れるよ」
去年も同じようにこの桜を見上げたのに。
今年は去年以上に美しく、生き生きと咲き誇っているように見えるのかもしれない。
大好きな先輩が隣にいるからですよね、きっと。
その言葉は、もう少し先に取っておこう。今はまだ照れくさくて言えないから。
いつか、照れも何もなく言えるようになるかな。――言えるくらい、一緒にいられるかな。